もう一つのカードは、北朝鮮に対する制裁圧力の強化のほかに、最大の貿易赤字相手国の中国に対するものだ。このほどトランプ政権は、通商法301条の適用によって、中国の不公正貿易に対して制裁を検討するという、対中国強硬策への転換を明らかにしている。
北朝鮮と中国というアジア2カ国をセットにした攻めの強化は、その奥底には、かねがねスティーブン・バノン首席戦略官・上級顧問が振りかざしている「人種差別的カード」という側面を強く内包している。
すなわち、この「神のカード」「愛国心カード」「人種差別的カード」という、いわば3つのカードは、いずれもトランプ大統領を熱烈に支持する白人労働者のハートに訴える力があり、トランプ大統領が再選に向けて、この3つのカードを掲げるということは、トランプ政権の再選戦略の枠組みづくりにおけるバノン氏の完全復活を意味する。ただ、今回、バノン氏は目立ちすぎないように、「バノンよ、裏方に回れ」といわんばかりに、トランプ大統領自身の監視下におかれているようだ。
トランプ再選の追い風になる最高裁判断
見逃せないのは、6月26日、米連邦最高裁がイスラム圏6カ国からの移民を制限する「大統領令」の大枠を容認したことだ。それは10月に最終判断をするという条件付きとはいえ、トランプ政権の法案が形式的に認められたことを意味する。
しかも、最高裁の判事すべてが満場一致で支持を表明した。これは驚天動地である。トランプ大統領の指名によって、この4月に最高裁判事に就任した保守系のニール・ゴーサッチ氏の1票が結果を左右するどころか、リベラル系4人を含む最高裁判事9人全員がトランプ支持に回ったことになるからだ。
トランプ大統領が、この最高裁の判断について、「この国の安全保障にとって明らかな勝利」として歓迎したことは言うまでもない。
そもそも混迷する米国の社会情勢のなかで、同性婚の合憲など諸問題の判断には、行政でも議会でもなく、最高裁が現代の激動を生きる米国のリーダーシップを握っていると言っても過言ではない。そんな情勢下で、形式的とはいえ、最高裁判事全員の支持は、トランプ大統領再選への政治的なテコになりうる。
ともかく、この最高裁の判断は、トランプ大統領の再選にとって、追い風となることは間違いない。「ワーキングバケーション」と称して、意気揚々としているトランプ大統領の胸中を、米メディアは見逃しているのではないか。
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