ファミレス御三家、デニーズも復活ののろし ロイホに続き“高品質”追求に舵切る

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「オリービーポークのように、“何だこれ”と言ってもらえるようにメニュー開発を進めている。今後もどんどん新商品を出す」(大久保社長)という。

原材料の調達までこだわった独自開発品だけではなく、レシピを抜本的に変えたビーフシチュー(昨年冬)を皮切りに、生パスタ(今年5月)、米国産のアンガス牛を使ったステーキ(同6月)など高品質の高額メニューを次々と投入してきた。

その結果、大久保氏がセブン&アイFSのトップに就任してから最初の決算期となった2012年2月期はわずか2200万円ながらも、同社設立以来初の営業黒字を計上した。前13年2月期は営業利益8.6億円と大幅な増益になったのみならず、売上高についても減収に歯止めがかかった。今14年2月期も営業利益が前期比62%増の14億円と、引き続き大幅な増益を見込んでいる。

「デニーズにはまだ成長のチャンスがある」

ハンバーガー大手の日本マクドナルドはかつて、まずQSCを立て直してから高額な「クォーターパウンダー」や「えびフィレオ」を売り込むことで成功につなげた。デニーズもQSCの基本を徹底することで顧客の信頼を高めてから、新商品を売り込んでいる。

こうした戦略は、ファミレス御三家の中では高品質追求路線に最初に舵を切ったロイヤルホストでも活用されている。ロイヤルホストの場合、3つに分かれていた子会社を2011年に統合、その後はグランドメニューの改定回数を減らし、ハンバーグなど主力メニューに注力することで提供時間の短縮に努めた。ロイヤルホストにおいても、高価格メニューの投入はQSCの改善があって初めて可能になったといえる。

業績に底打ちの兆しが見えてきたとはいえ、セブン&アイFSの前身であるデニーズジャパンは、わずか13年前の2001年2月期には、売上高1000億円、経常利益56億円をたたき出していた。それを思えば、セブン&アイFSの利益水準はまだ低い。14年4月、15年10月と消費税の連続増税も待ち構えており、決して楽観できる状況ではない。

衰退産業、おいしくない食事の典型と言われたファミレス。「デニーズにはまだまだ成長のチャンスがある」と大久保社長は熱を込める。デニーズは、ファミレスは、本当にかつての輝きを取り戻すことはできるのか。

(撮影:今井康一)

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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