メインバンクが仕掛けるM&A 優先株出口に悩む三洋電機、松下による買収は…

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メインバンクが仕掛けるM&A 優先株出口に悩む三洋電機、松下による買収は…

ジャーナリスト 小山 守

 「検討の事実はない」--。

今年4月末に一部の全国紙が報じた松下電器産業(10月からパナソニック)と三洋電機の資本・業務提携。両社は即座にこんなコメントを流し、全面否定の姿勢で応じた。

「寝耳に水。昨年3月の辞任劇の後も何かにつけ復権を策する創業家を牽制するため、銀行筋かどこかが意図的にリークしたのではないか」。三洋関係者の一人も苦笑を交えながら、半ば黙殺する。

不正会計の責任を取らされる形で事実上、社長の座を追われた井植敏雅氏はなお特別顧問のポストにとどまり、今も会社に「ほぼ日参する」(周辺筋)。立場上、経営には直接タッチしないことになっているとはいえ、現首脳陣にとってはやはり「何となく目障りで、かつ煙たい存在」(同)であるに違いない。

水面下で進む合併視野のM&A構想

だが--。事情通らによると、報道の内容は「実は当たらずといえども遠からず」。それどころか、事態は資本・業務提携の枠をはるかに超え、両社の主力行である三井住友銀行の主導の下、合併を視野に入れたM&A構想が水面下で模索されているというのである。

2008年3月期決算。三洋はデジタルカメラやリチウムイオン電池など2次電池の牽引で営業利益は761億円と前期比78・6%の大幅増益となり、287億円の純利益を計上、4期ぶりの最終黒字化を果たした。財務体質の改善も進み、05年3月末時点で1兆2000億円を超えていた有利子負債は今年3月末に4889億円と6割近くも縮小。昨年の9月中間期まで記されていた継続疑義の“烙印”も消滅し、井植失政後の舵取り役を任されてきた佐野精一郎社長は、「聖域なき構造改革の成果」として経営再建が軌道に乗りつつあることをアピールする。

余勢を駆って三洋が09年3月期から始動させたのが、新中期計画「チャレンジ1000」。2次電池と太陽電池、それに光ピックアップなど電子部品を加えた3事業に向こう3年間で全体の設備投資の約7割、2500億円を集中投資。11年3月期で売上高2兆3800億円、営業益1000億円(必達目標は900億円)を目指そうというものだ。

「1000日間で(AV・白モノ家電などを含む)すべての事業を黒字化し、最終年度には完全復活したと認められる企業に変革することを約束する」。佐野社長の鼻息は荒い。

とはいえ、三洋があえて「完全復活」を唱えるならば、その前に乗り越えねばならぬ重い課題がある。経営危機に陥った際、三井住友銀と大和証券SMBC、米ゴールドマンサックス(GS)の3グループに資本支援を仰ぐ形で割り当てた総額3000億円にのぼる優先株の問題だ。

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