次期FRB議長に求められる、第3の使命とは? 雇用や物価と並び、重要視されてきた「低金利」の弊害

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次期議長の候補者としてさまざまな名前が挙がっており、それぞれの議長としての資質を問う記事やコメントが数多く報道されている。誰が就任しても課題は同じという意味で「コインを投げて決めればいい」(フィナンシャルタイムズ、8月11日付)という極端な意見もあるが、次期議長の選出は「金融政策の長い経験」を重視するのか、それとは別の資質を重視するかの選択、と考えていい(ウォールストリートジャーナル、8月2日付)。

「金融システムの安定」が第3の使命として浮上

「金融政策の長い経験」を重視するならFRB関係者(現時点ではイエレンFRB副議長かコーン前副議長)が次期議長だろう。しかしサマーズ元財務長官の“台頭”によって、「金融政策の長い経験」だけでは不十分だ、という見方が広がった。「金融システムの安定」を遂げるための資質が求められるようになったのである。

 「金融政策の長い経験」とは、言い換えればデュアル・マンデートの達成を図るために蓄積された経験を指す。今回の“次期議長選”は、そのデュアル・マンデートだけではもはや不十分であり、ポスト・バーナンキのFRB、FOMCに対して「金融システムの安定」という「第3の使命」を課そうとする動きとしてとらえることができるだろう。

「金融システムの安定」は重要な課題だ。2010年4月、白川前日本銀行総裁はニューヨークでの講演で、以下のように、これからの金融政策の政策目的として「安定的な金融環境」の実現を挙げている。講演のタイトルは『中央銀行の政策哲学再考』であった。

「通常、金融政策の目的は物価の安定と定義されます。実際、こうした定義でまったく差し支えない時代が比較的最近まで続いてきたように思います。しかし、中央銀行に期待される役割は、物価の安定と1対1には対応しないこともわかってきました。バブルの経験が示すように、物価が安定していても、経済は大きく振幅することがあります。

中央銀行に求められていることは、安定的な金融環境(a stable financial environment)を実現することであり、それを通じて持続的な成長を達成することです。物価の安定は、金融環境の安定を構成する重要な要素ですが、これだけに限定されるものではありません。それどころか、短期的な物価の安定にくぎ付けになると、究極の目的である経済の持続的成長を困難にする可能性すらあります」

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