太陽電池・世界大バトル! お家芸が一転窮地に、日本メーカー逆転への一手
アフリカ大陸の北西沿岸に近い大西洋上に位置し、欧州の代表的なリゾート地として知られるスペイン領カナリア諸島。その一つであるテネリフェ島で、巨大な“ソーラーパーク”が誕生する。日本の住友商事が85億円の事業費を投じた太陽光発電施設だ。東京ドーム2・8個分に相当する広大な用地に設置された大量の太陽電池パネルが生み出す電力は、年間9メガワット。同社によると、現地の3500世帯分の電力需要を賄える規模に相当するという。
欧州では近年、こうした巨大なソーラーパークの建設が各地で相次いでいる。その背景にあるのが、「フィード・イン・タリフ」と呼ばれるクリーン再生可能エネルギーの普及促進策だ。フィード・イン・タリフを日本語に訳すと「固定価格買い取り制度」。国の法律によって、太陽光発電などによる電力を電力会社が長期間にわたって高い固定レートで買い取る制度だ。現在、欧州で20以上の国が同制度を採用し、韓国など他地域にも広がりつつある。
2000年に先鞭をつけたドイツでは、04年の買い取り価格引き上げを機に太陽光発電システムの国内導入量が急増。05年にはそれまで累計導入量でトップだった日本を抜き去り、太陽光発電の最大普及国へと躍り出た。06年に制度を充実させたスペインも導入量の伸びが著しく、単年度の導入量は07年に日本を逆転。「昨年の太陽光発電量は500メガワット以上。2010年に400メガワットとする目標を掲げていたが、3年前倒しで達成した」(スペイン大使館)。
導入が進むのも当然である。ドイツを例に取ると、電力会社による買い取り金額は電力料金の2~3倍に相当する。しかも、20年間にわたって同じ価格で買い取ってくれる。スペインに至っては、買い取り期間が25年で、その間は物価上昇率に連動して買い取り価格も引き上げる手厚い内容だ。現在のドイツやスペインでは、この制度を活用すると初期導入費用が10年程度で回収でき、その後の発電分はまるまる儲けになる。
こうした“うまみ”に着目した一般家庭や事業会社が、こぞって自宅の屋根や空き地などに太陽電池を設置。さらには世界的なカネ余りの中で投資ファンドなどの資金まで流れ込み、各地で広大な敷地を利用した大規模なソーラー発電施設の建設が相次いでいる。冒頭で紹介した住商のケースもその一つである。
つまり、欧州では太陽光発電が高い利回りを生む投資対象となり、「そうした投資マネーが太陽電池の急激な需要拡大をもたらした」(ゴールドマン・マックス証券アナリストの渡辺崇氏)のだ。同証券の調査によると、07年の世界需要は前年比1・5倍の約3ギガワットにまで拡大。ドイツ、スペインを中心とする欧州がその6割以上を占め、わずか2年で世界需要は倍にまで膨らんだ。