平壌では1人で携帯2台へ、端末狙う窃盗犯も 北朝鮮の最新携帯電話事情

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国際的には「閉鎖国家」のイメージが強い北朝鮮で、これほどの携帯電話の普及が国家機密の漏洩などの面で心配しないのかと思いがちだ。実際に最近、日本の一部メディアが「米国内による国家転覆の手段になっているとして、規制を強化した」との内部文書を入手したと発表。「やはり北朝鮮はそうなのか」という声が北朝鮮ウオッチャーの間で広まった。

ところがその数日後、北朝鮮国営の朝鮮中央通信が「金正恩第1書記が(携帯電話を製造する)5月11日工場を視察した」とのニュースを写真付きで報道。さらに金第1書記が「携帯電話の需要が増えているとの報告を受けている。人民たちが好んで使っていることは私もうれしいと発言した」と付け加えている。

金正恩第1書記「人民たちの携帯電話使用はうれしい」

また、今年から平壌の空港から入国する外国人に対しても、それまで許されていなかった携帯電話の持ちこみが可能となり、入国の際に携帯電話のSIMカードも販売されている。このSIMカードでは北朝鮮国内には電話ができないが国際電話は可能だ。

これは韓国人にも適用された。8月に北朝鮮に入国した韓国人にも携帯電話の持ちこみが許されたと韓国の聯合ニュースが報じている。ただ、韓国には電話はかけられないとSIMカードの販売員から説明を受けたようだ。とはいえ、将来南北間で携帯電話の通話が可能になれば、南北交流の面でもあらたな変化をもたらすきっかけとなりそうだ。

最近では、これら携帯電話を狙った窃盗犯も出始めたとの報道もある。携帯電話の普及という、これまでの北朝鮮を振り返るとささやかながらも大きな変化だ。平壌などの都市部だけでなく地方にも確実に広がっており、北朝鮮の社会にどのような変化を起こすか、関心が高まっている。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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