白百合卒ママが我が子を公立に行かせた事情 なぜ「アンチ白百合」になったのか?
――もちろんです!
早希さんの振る舞いは、気さくでありながら決して品を失わない絶妙なバランス感覚を保っている。
それはやはり、彼女がかの名門お嬢様学校、白百合学園育ちだからだろうか。
しかし聞くところによると、彼女は自身の娘を敢えて公立小学校に通わせたのだという。
彼女のスムージーボンボンが運ばれてくるのを待って、取材班は切り出した。
――お嬢様も白百合に通わせたい、とは思わなかったのですか?
その質問を聞くや否や、彼女の顔から笑みが消えた。
これからは“普通じゃない”思考が求められる時代
「白百合に入れたいという気持ちは、皆無ですね」
これまでとは打って変わって、低い抑揚のない声で彼女は答える。
――そ、それはなぜでしょう…?
あまりのテンションの差に少々困惑しつつ、取材班は遠慮がちに尋ねた。
「白百合というか、お嬢様学校の類に娘を預ける気はありませんでした。良き妻、良き母であれという教育方針って、もう時代錯誤だと思いませんか?」
それは、取材班も同感だった。
現代においても女性の社会進出は当然のこととなっているのだから、これからの時代は尚更である。
自力でお金を稼ぐ必要のない恵まれた家庭のお嬢様であれば別だが、そうでなければ良妻賢母を目指すことなどリスクでしかないように思う。
「それに、私立のお嬢様学校はルールが多すぎるんです。筆箱から鉛筆まで指定のものがある。そういう無駄な規則って、子どもの考える力を奪うんですよ。目の前のことに疑問を持たなくなってしまう」
なるほど、少々極論の気配はあるにせよ、早希さんの言うことも一理ある気がする。
ルールによる規制は、子どもたちから選択の自由を奪うということである。
自由を奪われた子どもはただ言われた通りにするほかなく、結果として主体性を失う。自立心や自律性が養われる場面も減ってしまうだろう。
「私は娘に、従順なんて求めていません。誰にも思いつかないような、“普通じゃない”ことを考えられる力こそ、これからの時代に求められる能力でしょう」