ルミネのセール開始が他より1カ月遅い事情 アパレル界の「いびつな構造」は改善するか?
今夏のセールで何か買い物をしましたか? 商業施設では、アパレルブランドを中心に夏と新春(冬)にセールを開催するのがもはや恒例行事となっています。現在はこれに加えて一年中何らかのセールが行われており、昨年11月には、アメリカの「ブラックフライデー」を取り入れる動きも見られました。
年々後ろ倒しされるルミネのセール開始時期
2017年夏のセールの場合、多くの百貨店やショッピングセンターが6月末に足並みをそろえてスタートしました。その流れに乗らなかったのは、三越伊勢丹百貨店と、JR東日本グループが運営するファッションビルのルミネです。両社とも2012年からセールを7月中旬に後ろ倒し、ルミネは今年から一歩踏み、例年より約2週間遅い7月28日からのセール開始を発表しました。大多数の商業施設から1カ月遅れての参入になります。
この動きは、アパレル業界に蔓延する"いびつな構造"を是正するうえで、重要な一歩につながるかもしれません。
そもそも、セールは百貨店が“消化仕入れ”をしていた慣習から生まれたと言われています。消化仕入れとは、百貨店にテナントを借りている卸業者やメーカーが、商品を販売(消化)したと同時に、百貨店が商品を仕入れるという仕組み。商品を買い取って販売する“買取仕入れ”と比べて在庫を抱えずに済む一方、利益率は“消化仕入れ”のほうが低くなります。
利益を上げるためには、数で勝負するしかない百貨店は、テナントとして場所を借りているアパレル各社に店頭の在庫を増やすように要求。それによって多くの商品が余ってしまうという現象が起き、在庫をダブつかせないためにセールを行うようになりました。
売れ残りを危惧したアパレル各社がリスクヘッジとして行ったのが、原価率を下げること。セールという文化が浸透してからは、商品を開発する段階から、「どれくらいの数が定価で売れて、どれくらいの数がセールで売れるか」という予測を行ったうえで品数や販売価格が決められます。これが、セールで定価よりもはるかに安い金額で販売しても利益を確保できる理由です。しかし、その裏には原価率の抑制という深刻な問題があります。
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