ルミネのセール開始が他より1カ月遅い事情

アパレル界の「いびつな構造」は改善するか?

同様の“いびつな構造”は、アウトレットモールにもあります。従来、アウトレットはセールでさばき切れない商品が行き着く場所でした。しかし現在では、多くのブランドがアウトレット専用の商品を作っています。「アウトレットで購入するとお得」という消費者の心理を読んだうえで、最初からアウトレット向けに商品開発したほうが売れやすいと判断しているのです。

この動きがさらに広まっていくと、本来アウトレットが果たすべき機能は形骸化し、安い商品が求められるだけの場所へと成り果てていきます。そこでもやはり売れ残りを想定して商品が開発され、加えてアウトレットはそもそもの価格が低く設定されているため、原価の抑制はますます進んでいくでしょう。

なお、セールやアウトレットでも売れない服は、在庫として置いているだけでもコストがかかるため、最終的には廃棄されます。少し古いデータですが、直近の2010年の中小企業基盤整備機構の調査によると、衣料品の国内供給量は111万トンで、排出量は94万トン。総排出量には、古着屋さんに流れるものも含まれているため、再利用されることなく、ゴミとして捨てられる服の量は大体60万トンくらいと推測できます。1つの洋服を約300グラムと仮定すると、1年間で約20億着が捨てられている計算に。大量生産は大量廃棄と表裏一体であることがこのデータに顕著に表れています。

価格以外の「価値」があれば、セールはいらない

アパレル業界がセールに依存することは、業界全体の不健全化を招きます。それでも依存してしまうのは、価格競争から抜け出せていないということです。価格以外の部分で堂々と「うちはここが違います」と胸を張って勝負できるものがあれば、極論を言えばセールを行う必要はないのです。

実際、アパレル業界にはセールを行っていないブランドもあります。先日アメリカに行ったときに足を運んだ「SHINOLA(シャイノーラ)」はセールを行っていませんでした。SHINOLAは自動車メーカーから転身を遂げたブランドで、腕時計や自転車、革製品などの製造を手掛けています。試験にパスした人たちを職人として育成しており、商品のクオリティの高さはお墨付き。セールをせずとも、商品を買ってもらえるだけの付加価値があるのでしょう。

私が運営するファッションブランド、「ファクトリエ」もセールを行っていません。前述のように、セールを行うことは、安く売ることを見据えて原価率を下げることであり、それはものづくりの品質を下げることに直結します。原価率を下げてシワ寄せが行くのは工場です。お客様に価値ある商品を提供すべく優れた技術力を保持している工場を次世代に残し、日本の工場から世界的ブランドをつくっていくことを目標とする私たちにとって、セールを行うことはポリシーに反する行為です。

セールを行わない代わりにファクトリエが採っているのは、商社や卸などを介さず工場直販にすることで、流通コストを削減して原価率を高めるという方法です。生産者と消費者を直接つなげられるのは、インターネットを活用できる時代だからこその特権です。こうすることで、工場の利益を確保しつつ、お客様にも品質に対して適正な価格で商品を提供することができます。

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