ルミネのセール開始が他より1カ月遅い事情

アパレル界の「いびつな構造」は改善するか?

商業施設の動きも少しずつ変わってきています。冒頭で述べたように、ルミネは年々セールの時期を後ろ倒しし、今年は8月も目前の7月28日から8月6日までの開催としました。

ルミネ側は、「大量生産・大量販売を前提としたものづくりから脱却し、デザインや素材にこだわった商品を、丁寧な接客でお買い上げいただくことを経営スタンスとしている。セールの常態化によりお客様が価格や商品に不信感を持っている現状もあり、プロパー販売を徹底するため、7月末のスタートが適切だと判断した」(ルミネ広報部)とその意図を説明します。

こうした施策の一環として、ルミネが近年推し進めているのが、次世代を担うブランドやデザイナーの育成です。常設店舗を設置して若手デザイナーに販売の機会を提供したり、ルミネにしかないオンリーショップを開催したりと、従来のデベロッパーとしての役割に加えて、品質の高い商品を提供するという「ものづくり」の側面も強めています。

JR東日本グループが、売上高約1兆0831億円(2015年度)を誇るショッピングセンター事業の収益力強化に努めている今、ルミネが率先してクリエーティブに力を入れて商業施設としての差別化を進めていることは、他の商業施設にも良い影響を与えていく可能性があります。価格以外の部分で勝負できる価値を確立し、そこに消費者が満足するようになれば、いつかショッピングセンターでセールが実施されない時代が訪れるかもしれません。

セール依存の風潮を替える「打開策」とは?

セール依存の風潮を変えていくためには、以上のように原価率が高くても商品が売れる方法を考えるべきです。また、生産量を適切な数に抑え、在庫をだぶつかせない工夫も重要です。最も効果的なのが、オーダーメードでの受注生産。ただ、すべての商品をオーダーメードで製造するのは難しいため、 過去の売り上げデータを活用した効率的な生産が現実的です。これはユニクロがこれから取り組もうとしている分野でもあります。

一か八かのヒット商品をあえて作らないというのも1つの手でしょう。大量生産の背景には、ヒットを狙うあまり、初速の売り上げが良かったときに大量の追加発注をかけているという要因もあります。ただ、多くの商品はヒットに至らず、結果として余剰在庫を生み出しています。それを、多品種小ロットの生産のすれば、在庫をダブつかせるリスクを最小化できます。

以上の策を講じて、それでも商品が残るのであれば、在庫整理の方法としてのセールは有効でしょう。すなわち、セール自体が問題なのではなく、はなからセールを見越したうえで商品を大量に生産し、それが生産現場へのシワ寄せや大量廃棄を巻き起こしているという一連の仕組みが問題なのです。

ブランドが価値ある商品を提供し、それにふさわしい対価を消費者が払う。この本来あるべき姿へと是正していくことができれば、セール依存の体質は変わっていくはずです。

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