移住人気ナンバーワン「糸島」が抱える問題

古民家学生寮プロジェクトが果たす役割

大学時代は社会に出る直前の教育の場です。社会にはいろんな世代、そしていろんなタイプの人たちがいます。インターンで「企業」は体験することができますが、社会の在り方や、社会に潜む課題までリアルに感じることはできません。これから社会に出る学生たちは、企業だけでなく「地域」と「社会」との関わりもリアルに体感しておいた方がいい。そこから得る気づきは、大学の座学中心の教育課程ではなかなか学べないものです。ですから、糸島の古民家学生寮は「地域」と「社会」の体験の場として学生に提供したいのです。昔からの寮が学生寮1.0だとすると、今回の糸島の寮は学生寮2.0。時代の変化に合わせ、学生寮のスタイルも変化する必要があります。

――学生側はどのようなニーズがあるのでしょうか?

九大実施の生活行動に関するアンケートで、移転によりキャンパスが都心部から離れたため、家と大学を往復するだけの学生が以前より増えた、という結果が出ています。せっかくの大学生活なのに、通学時間に縛られてしまってはもったいないですよね。大学の近くに暮らせれば時間を有効に使えます。でも、もしワンルームマンションだと一人でぼんやり過ごしてしまうこともあると思いますが、寮であれば寮生同士がお互い刺激になりますし、周囲の住民とも交流することもできます。

寮の共同生活においては、住人同士の摩擦や衝突は避けては通れません。気の合う友達同士、シェアハウスで暮らすのも悪くないですが、卒業して社会に出ると気の合う人とばかり仕事したり、つき合ったりすることはあり得ません。学生の自律性を重視して、ルールや責任も背負った上でお互いがやりたいことを実現する。そのプロセスで生じる衝突や課題から逃げずに、自分たち自身で解決する。そんな課題解決力を身につけたい学生に今回の学生寮に入ってもらえたら、と思っています。

商社マンから寮ビジネスへ。問われる経営手腕

――東京の商社マンだった大堂さんが脱サラして糸島に来ることに、葛藤や迷い、不安はなかったのでしょうか。

商社を辞めて糸島に移住することに、迷いはありませんでした。結婚して約1年で商社を辞め、子どもが生まれるタイミングで糸島に移住しましたので、家族には多くの心配をかけたとは思います。しかし、最終的には妻が「後悔するより、好きなことをやった方がいい。好きなことはきっとうまくいく。」と背中を押してくれました。

学生寮のビジネスモデルは、社会人2、3年目から頭の中にイメージがありました。九大移転は母校に恩返しもでき、寮ビジネスをスタートさせる絶好のチャンスでした。また、大学時代の寮友たちが佐賀や阿蘇など九州にUターンして起業していたことも、私が九州に戻って起業する決意を早めてくれました。

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