移住人気ナンバーワン「糸島」が抱える問題 古民家学生寮プロジェクトが果たす役割
それに何より、農業体験や、地域の高齢者・子どもとの交流は学生にとって大きな気づきが得られます。私自身、学生時代を過ごした寮で、地域交流に取り組んでいました。その交流の中で、相手に喜んでもらえること、誰かの役に立つことが、自信となっていきました。若い頃は誰しも自信がないものですが、社会で自分の存在を認めてもらえることの安心感は次のチャレンジを生み出します。
このような経緯から「1.地元の人手不足問題」「2.九大移転による住戸不足問題」「3.空き家問題」「4.若者の育成」の4つを一度に解決する方法として、空き家を学生寮に再生するプロジェクトを始めました。
築146年の古民家を学生寮に再生する
――学生寮に再生する空き家はどうやって探しましたか。
今回の物件に出逢うまで30物件くらい見て回りましたが、糸島の空き家を調べていくうちに、大き過ぎてなかなか借り手が見つからない物件があることに気がつきました。昔の住居は大家族で住む前提で作られています。柱や梁は立派でまだまだ使えるのですが、間取りが多すぎて現代の3~4人家族で住むには大きすぎるのです。そうした住居のうち、九大に通いやすい立地にあった築146年の古民家を、学生寮の第1号にすることにしました。家のオーナーと地元区長に「地域にひらかれた」九大生の寮として活用することを説明し、許認可手続きを後押ししてもらうことができました。
今回の物件では、間取りが多いこと、広いキッチンや庭があることはそのまま活用して、老朽化が進んでいた床や水回りを学生が使いやすい仕様にリノベーションします。改装費としてかかる一時的費用は「九州熱風法人よかごつ」で負担し、オーナーにはその分家賃を少し低めに設定してもらいました。オーナーは初期費用をかけずに、空き家を貸し出すことができます。学生募集や寮のメンテナンス、コミュニティづくりなどの運営はすべて「よかごつ」で担います。学生は相場より安い家賃で入居することができます。
この古民家学生寮第1号は2017年9月にオープンする予定ですが、既に多くの学生が説明会に集まってくれています。学生にとっては家賃の安さも魅力ですが、古民家での共同生活そのものに関心が高いようです。オーナーにとっては、思い出のある大事な家を取り壊すことなく、若い人に活用してもらいながら家賃収入も得られます。学生が地域住民の人手不足解消を補えば、オーナー、学生、地域住民のみんなにメリットが生まれるのです。
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