合衆国選挙法では、外国からの資金援助や寄付など、カネを受け取ることは、ファイナンス全般として厳しく禁じられている。カネ以外に価値あるものとして、ライバルに勝つための情報も価値ありと解釈され、同罪となる。公開メールで明らかにされた会合の意図は、明らかに価値ある情報を得んがためであった。
さらに、別の条文で、価値ある情報を得んがために「勧誘」することも禁じられている。ジュニア氏がメールで返答した”I love it”の一言は、「その線でもっと行け」「もっとよこせ」という「勧誘」を意図した、明快な見解を示したと解釈される、という説も根強い。
合衆国選挙法違反については全否定
ジュニア氏の合衆国選挙法違反については、ジュニア氏の弁護士も全否定している。今後、FBI捜査や議会調査の過程で疑惑が強まることになれば、ジュニア氏が個人的に立件される可能性はある。問題は、クシュナー氏らを含めて「共謀罪」が成立するのか。
8人で会合したことが共謀に当たるとなると、トランプ大統領の弾劾にも影響を及ぼす懸念がある。弾劾ということになれば、舞台は議会上院となり、ジュニア氏を取り巻く共謀の有無は上院の大きなテーマとなる。早晩、複数の委員会でジュニア氏の証人喚問がなされる運びとなろう。ジュニア氏が完全否定しても、クシュナー氏らトランプ陣営の誰かとの共謀の有無が徹底調査されるだろう。
ただ、「法」の観点から補足すると、米国では、「共謀罪」は簡単には成立しない。メディアでは、いかにも共謀罪が成り立ったかのように論評されても、論理的かつ精緻に、しかも法的に立証することは極めて難しい。
米国では、裁判官が「法」を創るだけでなく、訴訟弁護士も「法」を創る。日本のように弁護士は「外様」ではない。米国では、刑事事件と刑事訴訟の世界は、トップ50人の刑事専門訴訟弁護士によって伝統的に支配されている。いまだかつてその訴訟弁護士たちが、そうそう容易に「共謀罪」を成立させたことがないからだ。
日本は、「共謀罪」に関連して、それを見習うべきである。日本が導入した「共謀罪」を安易に運用することは決して許されない。社会全体でその運用に当たって厳しい目を注ぎ続けなければならない。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら