老舗大企業ほど苦手なイノベーションの本質

モノとサービスを総合的に見る視点が必要だ

さらに詳細なデータでは、最もデザインに投資している企業のパターンは「従業員50人以下で年商200万ユーロ(約2億5800万円)以上の製造業」という姿も見えますし、創業から年数が経っている企業ほどデザインの導入に消極的であることもわかります。逆にいえば、比較的年齢が若い創業者が、事業が軌道に乗ってきたときにイノベーションに手を打つ、という想定が大ざっぱながらできます。

製品単体ではなく「全体」を見る視点こそ必要

そして、こうした人たちが多くの手法を使い分けてイノベーションを実行していくための環境については、ヨーロッパでもそろっているとは言いがたいのです。そのため欧州委員会は、2016年から3年計画で、EU加盟各国を中心に、主に中小企業にデザインの考え方を定着させる目的で「企業のためのデザイン」というデザインコースを実施しています。

プログラムは大きく分けて5つのアイテムからなっています。

(1)マネジメントツールとしてのデザイン
(2)製品とサービスへの付加価値あるデザイン
(3)素材とテクノロジー
(4)効果的な製品開発
(5)持続性ある製品・サービス

日本にもこうしたデザインコースはありますが、現状でヨーロッパと大きく異なる点があります。その点とは、ヨーロッパでは、モノとサービスとを総合的に見る「プロダクト・サービス・システム(PSS)」が強調されている点です。このコースをアイスランドで主催したアイスランド・イノベーション・センターのガィティ・マルティンソンの言葉を紹介しましょう。

「これまで『デザイン』というと、スタイリングやユーザビリティ(使い勝手)に関心が集中していました。ですから、デザインにはもっと多様な活用法がある、ということを知る必要があり、デザイン・ドリブン・イノベーション(意味のイノベーション)を学ぶのが、今回のテーマになりました」

意味のイノベーションは、会社全体のデザイン資産を活用するという観点で、前述の「デザインの階段」では、「④戦略的デザイン」に相当します。たとえば、問題解決を対象とするデザイン思考は「③プロセスとしてのデザイン」にあてはまることが多いのです。マルティンソンの言葉は続きます。

「ユーザーを起点に置いたデザイン思考は、かなり情報が蓄積されています。しかし戦略的デザインに関する体系化した情報は圧倒的に少ない。一方、この変化の激しい時代において、アップデートした手法やツールを使わない手はありません」

このコメントを見ても、「意味のイノベーション」の手法に関して、需要と供給のバランスが悪いと認識されてきたことがわかります。そして、さらに興味深いのが参加者の反応です。

「意味のイノベーションを伝えるにあたって使う『メタファー(暗喩)』が、イノベーション全体を把握するのにとても役に立つと理解してくれました。また製品の単体ではなく、モノ・サービス・プロモーションを一体で、お客さんの目に意味のあるパッケージと見られることに関心がありました」

次ページ「意味のイノベーション」でカギとなることとは?
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