老舗大企業ほど苦手なイノベーションの本質

モノとサービスを総合的に見る視点が必要だ

たとえば従業員数が500人以上の企業の場合、2011年以降にイノベーションを少なくとも1回は導入したことがある企業は85%にのぼります。しかし、10人未満の企業では63%に下がります。その理由として、10人未満の企業のうちの実に71%が「資金不足でイノベーションを諦めるしかなかった」と回答しています。同じ調査で、500人以上の企業の場合は同様にイノベーションが頓挫してしまうケースが48%程度だったことと比べると、イノベーションの種類にもよりますが、「組織が柔軟(身軽)であればイノベーションが実現できる」というわけでもないことがわかります。

半数以上の企業はデザインを取り入れていない

デザインとイノベーションとの関係については、拙著『デザインの次に来るもの』でも解説していますが、実際のところ、イノベーションにはデザインの考え方が有効だと判断し、デザインを導入している企業はまだまだ少数派だということも、知っておくべき現実です。デザインの考え方以外にもイノベーションの手法はありますが、「デザインへの積極さ」が1つの指標にはなります。

この観点から、欧州委員会による2015年のレポート「バロメーター」を紹介しましょう。EU加盟国にスイスと米国を加えた1万4000社へのアンケートの結果をまとめたものが「デザインの階段」です。

①デザイン未活用

②スタイリングとしてデザイン活用

③プロセスとしてのデザイン

④戦略的デザイン

項目の数字が上がるほど、デザインをより全社的に、経営のコアに取り入れていることになります。意外なことに(あるいは安心する方もいるかもしれませんが)、半分以上の企業はデザインをまったく取り入れていないのです。第2段階は商品の色・カタチのレベルにおいても10%前後。つまり、イノベーションに積極的な姿勢が見えるのは約30%しかないのです。

デザイン(design)の語源であるラテン語のdesignareには、「意味を与える」あるいは「企画する」という意味があります。「バロメーター」の調査からいえるのは、これらの意味がわかっているかどうかにかかわらず、デザインと距離を取っている(イノベーションに腰が引けている)企業のほうが多い、ということです。

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