米長期金利上昇は続かず、ドル安円高へ進む JPモルガン・チェース銀の佐々木融氏に聞く

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――当面のレンジは?

1ドル=115円台がピークでそこから111円に行く展開だろう。IMM通貨先物の円売りポジションも年初と同じ水準まで積み上がっているので、過熱感がある。年末に向けてはもう一段のドル安円高、1ドル=110円割れと見ている。

海外への直接投資のフローが結構出ており、1月から5月までで対外直接投資はネットで8.7兆円出ている。また日本のマイナス金利政策による国内の運用難を背景に、5月と6月で投資信託から外国株の買いが出ているため、当初予想していた100円台前半までのドル安円高にならない可能性はある。

ドル安でユーロは今年の最強通貨に

――トランプ政権の経済政策、とりわけ保護主義政策の今後の行方と、為替への影響をどう見ていますか。

現在、トランプ大統領は内政で困難な状況が続き、経済政策が遅れている。ただ、いずれは影響が出てくるだろう。保護主義政策が本格化してくると、いちばんスケープゴートになりやすいのは日本だ。日本は同盟国で立場も弱い。貿易収支を見ても、去年の日本の貿易黒字が4.1兆円で、対米貿易黒字を見ると6.8兆円、うち自動車の対米貿易黒字が4.3兆円。日本の貿易黒字全体より対米自動車貿易黒字のほうが大きい。米国への自動車輸出額が4.4兆円で、米国から輸入している額は0.1兆円しかない。トランプ大統領が米国内に配慮するとき日本はたたきやすい相手だ。ドイツは、貿易政策で文句を言っても、金融政策の担い手はECBなので効果がない。

伏兵として注意しておくべきリスクは、日本の安倍政権の支持率の低下がこれから注目されてくるかもしれないことだ。現在は、市場はECBやカナダ中銀などがタカ派的になっていることに注目しており、日本のことにはほとんど目が向いていない。次の材料を探しているときに、安倍政権の支持率の急落に注目して、アベノミクスも終わりか、という話になってくるかもしれない。

――ユーロはまだ上昇しますか。

ユーロは今までが弱かった。当初から今年は最強通貨になると見ていた。ユーロドルを見るときのポイントはユーロではなくドル。ドル安が始まった今、いちばん注目を浴びるべき通貨ペアはユーロドルだ。予想外の上昇を見せる可能性もある。ユーロ円はまだまだ上昇余地があると見ている。ユーロ円と日独金利差の相関で見れば、1ユーロ=136円程度まで上昇してもおかしくはない。

若泉 もえな 東洋経済 記者

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わかいずみ もえな / Moena Wakaizumi

東京都出身。2017年に東洋経済新報社に入社。化粧品や日用品、小売り担当などを経て、現在は東洋経済オンライン編集部。大学在学中に台湾に留学、中華エンタメを見るのが趣味。kpopも好き。

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