米長期金利上昇は続かず、ドル安円高へ進む JPモルガン・チェース銀の佐々木融氏に聞く

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佐々木 融(ささき とおる)/ 2015年6月から現職。2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行しチーフFXストラテジスト。2009年6月債券為替調査部長。2010年5月マネジング・ディレクター。 JPモルガン・チェース銀行入行前は日本銀行に勤務。1992年入行後、調査統計局、札幌支店を経て、1994~1997年国際局(当時)為替課で市場調査・分析に加え為替市場介入を担当。2000年7月からニューヨーク事務所で、ニューヨーク連邦準備銀行など米国当局と情報交換を行いながら米国金融市場全般の情報収集・調査・分析を担当。1992年上智大学外国語学部英語学科卒。 2016年、日経ヴェリタス為替アナリストランキング1位 。日本証券アナリスト検定協会会員。著書に『弱い日本の強い円』(日本経済新聞出版社、2011年10月)、『インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?』(ダイヤモンド社、2013年4月)

――7月25~26日のFOMC(米国連邦公開市場委員会)では、米国内の経済や海外の動きについての見方に変化が出てくると思いますか。

今までと特に変わるところはないだろう。世界経済も安定して動いている。ただ一段とインフレ率が上がらないことに警戒感が示される可能性はある。賃金が一向に上がってこない。

構造的な変化が大きくインフレ率が高まらない

――FRBは6月のFOMCで失業率の見通しを下げてきました。失業率がここまで下がって、賃金が上がらないのは、完全雇用ではないということでしょうか。日本でも同じ現象が起きていますが。

構造変化のほうが大きいのだろう。ベービーブーマー(団塊の世代)がどんどん退職していく中で、労働人口が高齢者から若者へと替わっていき、全体の平均賃金が下がっていく。またパートタイムが増えていることも賃金を上がりにくくしているといえる。

経済の観点からすると、IT革命の影響が大きいのではないか。ITによって情報が広く行き渡って効率化が進んでいる状態にある。たとえば米国ではアマゾンがホールフーズ・マーケットを買収し、ウォルマートが警戒している。アマゾンは生鮮食品の安売りもしている。こうした動きを見ていると物価が上がるわけがないとさえ思う。日本でも、かつてはわざわざ店まで出向いて高いものを買っていたが、今ではネットで安いところを選んでクリックするだけで買い物ができるから、小売りは値下げするしかなくなってきている。中国でもITの活用で物流のコストが大幅に下がりつつある。効率化が進めば、コストは下がり賃金も上がらない。

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