ホームで焼肉!駅が「宿」だとこんなに楽しい 無人駅の駅舎はどうして宿になったのか

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――旅がお好きと聞きましたが、宿を経営されているとなかなか出られないのでは?

「お客様が来ない時は休みなので、その間に旅に行ったりしています。あとは好きなDIYをやって新しい物を作ったり、修理したり。たとえばここのキッチンは、壁側に向いていたのを対面式に作り直しました。今年は前に作った丸太風呂が老朽化でダメになってしまったので、新しい丸太風呂作りに着手しようと思っています。

確かに昔はあちこち行くことが好きだったんですが、そのうち人に会うこと自体が楽しみになってきました。ここにいれば向こうから人が会いに来てくれる。それが今は楽しみで。そういうわけで、宿をやっていても、全然ストレスはないですね」

――旅も宿も、まさに一期一会なんですね。またぜひ来たいと思います。

夜の比羅夫駅。辺りは真っ暗(筆者撮影)

お話を聞いた後、外を見ると暗闇の中を長万部方面最終列車のキハ40がやってくるのが見えた。中には学生がチラホラと乗っている。

私たちにとっては、この列車は旅情や非日常性を感じるものだが、学生たちにとっては生活そのものなのだなあ、としみじみ思った。この駅では誰も降りなかった。

カメムシで旅気分…?

部屋に戻ると明かりにバチバチ!と何かが当たる音がした。よく見るとカメムシ。1匹ではなく数匹いるようだ。乙幡さんが途端に青ざめた。どうやらカメムシがとても苦手らしい。他に小さい虫も数匹。こちらはどうやらテントウムシ。

駅舎の周りは自然しかない。明かりが灯っているところに虫が集まるのは仕方がない。たまにタヌキやキタキツネを見かけたりすることもあるそうだ。

それから私はお風呂に入った。お風呂は消灯の23時まで入ることができる。丸太風呂がなくて残念だったが、昨年末に新しくバスタブを設置してお風呂場を作ったのだという。ログハウス風の丸太の壁伝いに風呂場に行ってみると、現代風なバスタブが……しかもそれは私の家のバスタブとまったく同じものだった! なんと床も同じ素材、風呂いすまで同じである。

はるか遠い地で、しかもこういう宿で、おそろいとは……。急に現実に引き戻されたが、わが家の風呂場にカメムシはいない。壁をはうカメムシの数を数えつつ、外から聞こえてくる虫の声や聞いたことのない鳴き声に耳をすます。

やはりここは北海道なのだ、と、湯船に浸かりながら再び旅気分に浸っていくのだった。

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