北海道庁は「JR在来線」を守る気があるのか 「観光列車による活性化」はピンぼけだ
JR北海道のローカル線を巡る議論が、この秋、大きく動き出した。
新聞各紙は10月下旬、JR北海道が輸送密度200人未満(1日1キロメートルあたりの輸送人数)の3路線について、バス転換を視野に入れて地元と協議する方針だ、と伝えた。札沼線北海道医療大学~新十津川間、留萌本線深川~留萌間、根室本線富良野~新得間の計179キロメートルだ。
さらに、輸送密度200人以上2000人未満の日高本線、釧網本線、石北本線、宗谷本線など計1112キロメートルについても「JR単独で維持することが困難な線区」と区分けし、地元と鉄道を維持する手法や支援について協議する方針だという。今年12月に廃止される留萌本線留萌以遠、地元協議が始まった石勝線夕張支線とあわせて計1324キロメートル、現在のJR北海道在来線の56%が存廃の危機に直面している。
JR北海道は、年内に単独で維持困難な線区を正式に発表し、自治体の支援を求める方針だ。地元の手助けがなければ、路線廃止、バス転換の可能性もありうる。
緊急事態にもかかわらず、地元の動きは鈍い。今週、JR線の将来について協議する「地域公共交通検討会議」の第4回目が開かれたが、いまだに議論の方向性を検討している段階だ。この十数年、道庁は北海道新幹線や高速道路の整備にばかり懸命で、在来線の存続について何も考えてこなかった。
なぜ、北海道や沿線自治体は、JR北海道がSOSを出すまで何もしてこなかったのか。国はどのような救済策を提案するつもりなのか。その方向性について考えていきたい。
存続問題のきっかけは特急脱線事故
JR北海道のローカル線の存廃が話題になったのは2年前だが、きっかけは2011年5月の石勝線特急の脱線事故だった。トンネル内で火災が発生した後の避難に手間取り、79名が負傷する惨事になった。
これ以降、石勝線や江差線、函館本線で貨物列車の脱線事故が相次ぎ、特急気動車の出火事故まで起きた。レールや車両、設備のメンテナンスの不具合が指摘され、データの改ざんも発覚した。
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