北海道庁は「JR在来線」を守る気があるのか 「観光列車による活性化」はピンぼけだ

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JR北海道は、国土交通大臣から事業改善命令と監督命令を受けた後、2014年に第三者委員会「JR北海道再生推進会議」を発足し、道知事や国交省、有識者を交えながら緊急対策を議論することになった。

なぜ、JR北海道で、ここまでトラブルが続出したのか。経営陣は2つの問題を指摘する。

1つは、計画的な車両や設備の更新をしてこなかったこと。寒冷地を走るJR北海道の路線は本州より過酷な条件であるがゆえに、設備の早めの修繕、更新が必要だった。にもかかわらず、経営難もあって1990年代後半から軌道修繕費と設備投資費を抑制し、国鉄末期に投入された老朽車両すら新車に置き換えられなかった。そのツケが今になって大きな負担となっている。

2つ目は、経営安定基金の利回りの低下。JR北海道の救済策として準備された基金の運用益で鉄道事業の赤字を穴埋めするのが支援プログラムだったが、近年の低金利で、運用益は1980年代の半分に落ち込み、JR北海道が修繕費を抑制する要因になった。

第三者委員会は2015年6月に報告書をまとめた。JR北海道が安全対策のため設備投資費と修繕費を捻出するためには、慢性的な赤字状況を解消せねばならない。そして、経営の持続可能性を担保するために「事業範囲の『選択と集中』」を検討することを求めた。

赤字額は年間187億円

留萌本線留萌~増毛間は今年12月4日で運行を終える。輸送密度はJR発足時の12分の1以下に落ち込んだ(筆者撮影)

JR北海道はこの提言に従い、2015年に各線の収支状況について公表し、輸送密度や営業費用と営業収益、営業係数など細かい数字を示した。経営情報を開示することで、沿線自治体に危機意識を持ってもらうのが目的だ。これは、国鉄が1980年代に地方交通線の廃止を推進したときと同じやり方だ。

国は2011年度から2018年度までに計1800億円の支援を決めている。JR北海道は基金の評価益を繰り入れ、2014年度から大幅に修繕費と設備投資費を増やした。ただ、2019年度以降、無利子貸付の返済が始まると、資金ショートが現実のものとなりかねない。

毎年300億円超の赤字を減らすには、不採算路線の経営を見直すしかない。JR北海道の試算によると、輸送密度2000人未満の路線1324キロメートルで年間187億円(2015年度、管理費込み)の赤字が出ている。このローカル線を今後どうしていくのか。それが再生のためのカギとなる。

こうして、極端に利用の少ない駅や列車の廃止、特急の減速や減便、そして赤字線の廃止までもが現実のものとなった。

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