北海道庁は「JR在来線」を守る気があるのか

「観光列車による活性化」はピンぼけだ

「JR北海道のローカル線が消えるかもしれない」と道民たちが不安に思い始めた今夏、北海道は新しい地域交通の活性化策をスタートさせた。「観光列車運行可能性検討会議」だ。JR九州の「ななつ星」のような観光列車を走らせ、交通ネットワークを充実させると共に地域活性化に繋げたいという。

どうも、ピントがぼけている。

JR北海道では国鉄型車両の老朽化が深刻な問題だ。新車を投入するための資金を捻出できず、ローカル線の普通列車を大幅に減らし、観光列車の運行を終了させてきた。来春には特急列車の区間短縮も予定されている。現状を理解しているなら、製造費30億円の豪華列車が欲しい……という話にはならないはず。今年度、会議のため868万円の予算が計上されているが、議論すべきなのは別な話題であろう。

JRは本当に「努力してこなかった」のか

特急が通過していく石勝線東追分駅。1日の乗車人員数が1人以下だったため2016年3月に廃止された(筆者撮影)

高橋知事はJR北海道に対して「経営努力を優先すべきだ」と批判を繰り返す。地元メディアも「公共交通機関としての責務を自覚すべき」と断じるが、その見方は一方的だ。

発足から30年弱、ローカル線存続のため運転本数を減らすことをせず、値上げもほとんどしていない。留萌本線や釧網本線でSL列車や「ノロッコ号」など観光列車を走らせ利用者を増やそうとしてきた。また、道民の期待に応えて、函館本線や根室本線などの高速化、札沼線電化、そして北海道新幹線にも重点投資をし、少しでも赤字額を減らそうとしてきた。

ただ、収益源だった在来線特急の利用者がかなり落ち込んでいる。札幌~帯広間の鉄道輸送量は2014年度に3718人/日、1991年度比で69%だ。札幌~旭川で同78%、釧路78%、函館74%、稚内59%、北見・網走54%と各方面とも厳しい。多くはマイカー利用に転移したと思われる。道内の高速道路や高規格幹線道路の整備が進み、1987年に167キロメートルだったのが2016年に1093キロメートルまで延長したことが大きい。道や市町村が整備費用を一部負担した無料の自動車道が増えており、今後も延伸は続く。道民が期待してきた幹線道路網の整備が、JR北海道を追い詰めた。これでは将来ビジョンを描けない。

JR北海道は公共交通機関としての自負を持っていたからこそ、彼らなりに汗をかいてきた。そんな鉄道事業者に、道内の自治体はきちんと寄り添ってきたのか。住民の足を維持するために努力してきたのか。はなはだ疑問だ。

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