JR大赤字線は100円稼ぐのに800円も掛かる 東海・西・四国・九州・貨物各社の営業係数
毎年1回発行される週刊東洋経済臨時増刊『鉄道 全真相2016』で、筆者はJRや民営・公営鉄道等の路線ごとの営業係数を試算し、発表している。100円の収益を上げるために要した費用を示す営業収支は、国土交通省鉄道局が発表する『鉄道統計年報』を基に求めたものだ。
ところが、最新の2013(平成25)年度版は同省の公表が遅れたため、今年4月25日発売の鉄道臨時増刊号に間に合わなかった。結局、鉄道臨時増刊号では自社で詳細なデータを公表したJR北海道、JR東日本両社の2014(平成26)年度の営業係数を試算するだけにとどめている。
その後、国土交通省鉄道局から2013年度の『鉄道統計年報』が発表となったので、順次算出していくこととして、まずはJR北海道、JR東日本の両社を除いたJR各社から紹介したい。
幹線が必ずしもいいとは限らない
路線ごとの営業係数の試算に当たってまず必要な数値は、各路線の旅客人キロまたは貨物トンキロ、そして営業キロである。続いて各社の鉄道事業における詳細な内訳が記された営業損益だ。
これらを基に、収入のうち旅客運輸収入は旅客人キロまたは貨物トンキロの比で各路線に分配した。旅客や貨物の輸送量が増えれば収入が上昇するという考えに基づいているからだ。その他の収入は営業キロの比で分配している。
一方、費用は固定費と変動費とに分け、前者は営業キロの比、後者は旅客人キロの比でそれぞれ分配した。ちなみに、鉄道は巨大な装置産業であることから直接経費となる運送費に占める固定費の比率が一般に60パーセント前後と大きい。
収入と費用とを異なる指標を用いて分配することにより、路線ごとの営業係数が求められ、比較しやすい。国鉄時代からの幹線の営業係数が必ずしも良好とは限らない一方で、大都市近郊の通勤路線では好成績を収めるケースが目立つという点を認識できるのも営業係数を試算した成果といえるであろう。
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