「公務員の中途採用」でダメ押しする転職市場 国税庁や県・市まで積極募集する本当の事情

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官公庁や自治体が社会人経験者を求めるのには、いくつか理由がある。その理由のひとつが、民間で経験した専門的なスキルを取り込みたいという思惑だ。

「高い専門性を兼ね備えた人材ニーズが高まっている一方、3年で部署異動がある今の行政の制度では、専門的スキルを持つ人材を育てるのが難しい。そこで民間企業で得た専門的なスキルについて行政で活かしてくれる人材を求める動きが活発化している」(大浦編集長)。

希望者のほうにも、安定志向を求める人、国や地方に貢献したいという人が増えているという。自治体などは転勤も少ないので、そうした不安も少ないとされる。

「民間から副市長を募集します」。大阪府の東北部にある人口5.6万人の四條畷市が、6~7月に女性活躍担当の副市長とマーケティング責任者の公募を、転職支援サービスなどを展開するエン・ジャパンの協力で行った。

「副市長を民間から公募します」

人材募集プロジェクトの調印式に臨む、東修平・四條畷市市長(右)と、鈴木孝二・エン・ジャパン社長(左) (記者撮影)

こちらの狙いも、民間で培ったノウハウを行政に活かしたい、という思惑から。「民間から女性副市長を採用し、子育て世帯を増やす取り組みをしていく」と語るのは、現在最年少市長でもある東修平・四條畷市市長。今年の1月に市長に就任したが、人材不足に直面したという。「行政マンとしては優秀な人材が多いが、マーケティングという言葉を知らないなど、知識不足を痛感した。そこに民間のノウハウを融合させて、行政の改善を図っていきたい」(東市長)。

副市長の公募という、ほかの自治体でも例を見ない取り組みに市民から否定的な意見も出ているが、「それで市が変わってくれるなら、受け入れるという声も多い」(東市長)という。

公募の協力をしているエン・ジャパンも、これを契機に、官公庁や自治体の人材募集の手助けを積極化させていきたいと考えている。「主に一般の企業に向けてサービス展開をしており、行政の人材募集にはあまりかかわってこなかったが、今後はもっと挑戦していきたい」(鈴木孝二・エン・ジャパン社長)。

官公庁や自治体が中途採用に積極的なのは、民間の活力を取り込むことだけが目的ではない。国税庁は、「年代別の人員構成で30代が少なくなっているので、社会人経験者の募集で補っていく」と、民間の転職説明会などに出展し、積極的な募集活動を行っている。

国税庁では戦後期の大量採用のあおりで、2000年ごろに定員がひっぱくしてしまい、今の30代の世代を多く採用することができなかった。そのため、30代世代の人員が、最も多い世代より半分程度の水準になってしまっている。そこで、30代世代をターゲットにあて、その世代の職員の数を増やすことを目論む。

募集条件も30代をターゲットにしており、7月1日時点の社会人経験が「8年以上」としている。ただ、財務・経理経験者だけでなく、ICTなどの情報処理業務の経験者や営業社員など、幅広い人材を求めているという。国税局全体で約220人の募集を行う。こちらも8月半ばに募集を締め切り、10月に1次試験を行う予定である。

官民を問わない経験者の人材争奪戦は、いましばらく続きそうだ。

宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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