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都民ファースト勝利で国政はどう変わるのか 政策をみると自民党と大差ないが…

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  • 土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授
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社会保障のあり方は、手厚く給付している割には負担の少ない現状を、今後、どちらの方向に改めるかが問われる。さらなる負担増をできるだけ少なくし、その代わりに給付の抑制をしっかり行うという方向か、今の給付をできるだけ維持しつつ、負担増を甘受する方向か。今のままさらなる負担増もなく、給付の抑制もないとなれば、わが国の社会保障制度は持続不可能だ。

その観点から言うと、現政権は、消費税率を10%に引き上げられないことから、議論は給付の抑制を軸に進んでいる。かといって、劇的な給付の抑制も進められず、消費増税を避けようとするあまり、社会保障の包括的な改革論議は思考停止的な状況で、社会保障制度の新機軸を打ち出せずにいる。ここで現政権との違いを出すには野党はチャンスなのだ。が、負担増にためらいがあり、給付削減も高齢者の顔色をうかがってか、強く打ち出せず、結果的に現政権だけが現実的な政策を打ち出すことができる構図になっている。

「地方創生」に対抗する新機軸を打ち出せるか

また地域間格差への対応は、東京一極集中の是正が一つの焦点となっており、現政権は「地方創生」を掲げ、農村部に比較的有利な政策を実施している。もし、都民ファーストの会が東京都だけに限らず都民(または都市部の住民)ファーストになれるなら、「地方創生」に対抗する新機軸が打ち出せるかもしれない。多くの税金を都市部から吸い上げながら、財政支出は農村部に多く配っている。都市部の住民が税負担をした割に、恩恵が少ないと思うのも、そこに起因している。

今の自民党は、都市部だけでなく農村部の選挙区でも多くの議席を獲得しているから、都市部の住民に軸足を移した政策を実施することは、構造的に困難だ。7月6日に大枠合意に至った日・EU(欧州連合)のEPA(経済連携協定)交渉で、日本が課すチーズの関税を守ろうとしたのも、都市部ではなく農村部をおもんぱかってのことである。

しかし、旧民主党政権時でも、当時の民主党は都市部の選挙区で自民党から議席を多く奪ったことから政権に就いたが、農村部選出の議員が幹部として力を持ったこともあり、そうした政策転換はなかなかできなかった。都市部と農村部の利害は、対立する面が多くあるにもかかわらず、政権との違いを打ち出せる政党はなく、結果的に現政権だけが現実的な政策を打ち出せる構図になっている。

この2つをとってみても、都議選後に国政に大きな影響を与えそうな兆しは、まだない。これら2つの政策で大きな変化がなければ、現政権が実権を握るというアドバンテージを持っているだけに、これに対抗することは難しい。政権の政策方針を大きく揺るがすことにはつながらない。都議選の影響が国政にあるとするなら、次なる選挙時の連携など限定的なものにすぎない。

政策面での新機軸を打ち出し、一定の国民の支持を得られる勢力が現れないかぎり、「安倍一強」が揺らぐとしても、それは自壊するときしかないのかもしれない。

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