野村克也「部下は上司の内心を自然と見抜く」

真の「リーダー」には何が求められるのか

野村克也さんは、リーダーの考えや心の内は、言葉にしなくても部下たちに伝わってしまうものだと考えています(写真:共同通信社)
今シーズンも、球界に鋭いコメントを発している野球評論家の野村克也さん。ヤクルトスワローズを監督として率いて、3度の日本一を達成した名将として知られています。選手時代にさかのぼっても本塁打王9回、打点王7回の強打の捕手として、チームの要であり続けました。野村さんが、野球人生の中で体得してきた「リーダー」としてのあり方や「強い組織」とはどのようなものなのでしょうか。著書『弱者の流儀 野村克也31の考え』にも記されている、ビジネスの世界にも通じるリーダー像や組織論を語ります。

 

プロ野球監督の仕事を試合中の「采配」だと思っている人が多いようだ。だが、それは違う。監督の仕事は「準備」である。

正直、試合が始まれば、どの監督だって振るう采配は大して変わらない。バントをさせるところでは誰もがバントをさせるし、ここは盗塁だというところでは盗塁をさせる。

長い野球の歴史の中でセオリーが築き上げられてきたのだから、戦術面では誰が監督だとしても、実はそう大差はない。ピッチャーの継投にしても、代打や代走、守備固めにしても基本的なパターンは決まっているし、何よりその道の「プロフェッショナル」の各担当コーチがしっかりと対応する。そして「監督、どうしましょうか」と話をしてくる。監督はそこからベストな決断をすればいいだけだ。

試合が始まったら、実際にプレーをするのは選手たちだ。だから、そこまでにどれだけ選手に指導・教育をしているのか。その結果が試合に出る。監督の指導が十分でなければ、試合で選手はしっかりと考えて動くことができない。逆に指導をしっかりできていれば、選手は監督があれこれ指示を出さなくても勝手に仕事をする。まさに試合は監督にとって、それまでの指導の成果がどれだけ出ているかが試される場と言えるだろう。

監督が主役なのは、プレーボールの「前」まで

監督が忘れてはならないのは、監督が主役になるのはプレーボールまでの準備期間だけ、試合の主役は監督ではなくて選手ということだ。監督の仕事は、試合が始まるまでのプロセス管理なのだ。

ともかく、いかに試合までに万全の準備をするか。監督としての仕事の肝はそこにある。戦術的な部分だけではもちろんなく、選手を見つけて育てることも試合までの監督としての準備の仕事のひとつだ。技術面の成長を促すだけでなく、考え方のエキスを注入し、そして人間教育も行う。そして戦術面でも勝つための準備を施す。

そのうえで試合に臨めば、あとは選手たちに任せるしかない。逆に言えば、そこまでのプロセスをしっかりとできているならば、結果がどうであれ最後にリーダーとして責任を取るだけである。

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