ロンドンに学ぶ誰もが安全に使える公共交通

「少数派」に我慢や自粛を強いる日本との違い

日本の満員電車はどうだろうか。ベビーカーや車いすがそこに乗り込もうとすることは自殺行為に等しいし、おそらくは周囲から「まわりの迷惑を考えろ」「何もこんな時間に混雑した電車に乗ることはない」と批判を浴びることになるだろう。混雑をつくり出している原因はすべての人にあるにもかかわらず、「我慢」や「自粛」が、ベビーカーや車いすを利用する少数派にだけ押し付けられてはいないだろうか。

公正な社会とは?

1分1秒を争うなかで仕事に励まれているビジネスパーソンの中には、「これ以上、通勤に時間を要することになるなんて勘弁してくれ」と思われる方も少なくないだろう。ただ、気に留めていただきたいのは、「いまのシステムは誰かを排除することで成り立っている」ということ。すべての人が同じだけ我慢すれば成り立つ仕組みがあるのに、それでも少数者だけに犠牲を押しつけるシステムを維持し続けるのは公正な社会と言えるのだろうか。

結局、これは車いすの男性の搭乗をめぐってトラブルになったバニラ・エアの問題にも通じる。搭乗を拒否された木島英登氏に対して、「格安航空会社にそこまで求めるな」という批判の声が多く上がっていたが、私はそうした声に疑問を抱く。格安航空会社(LCC)だからといって、何でも削ればいいワケでもないだろう。「経費削減のためにドリンクは出しません」は許されても、「経費削減のために救命具は積んでいません」「経費削減のため、歩けない人は乗せません」というのは、超えてはいけない一線を超えていると思うのだ。

誰かを排除することで成り立っている価格、サービス、仕組みに、どれだけ正当性が認められるのだろうか。もちろん、ロンドンの乗車ルールは「他人と密着したくない」という人間としての本能に近い欲求を実現するためにつくられたものかもしれないが、結果的には「誰もが安全に利用できる」サービスの提供を実現している。

さまざまな前提条件が異なるため、ただちにこうした乗車ルールを日本にも適用すべきだと主張するつもりはないが、いまのシステムにあらためて疑問の目を向け、「誰もが安全に利用できる」公共交通機関としてのあり方を考え直すことは、決してムダではないだろう。

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