徒競走でヒーローになる!たった3つのコツ 岡崎慎司が実践した「鈍足克服」トレーニング

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そのコンプレックスは、清水エスパルスに入団が決まってからも持ち続けていました。ゴール前に飛び込んでいって、クロスボールをワンタッチで合わせるプレーには自信を持っていましたが、プロとして結果を出していくためには、相手をぶっちぎるくらいのスピードも必要だろうと考えていました。しかしそれはないものねだり。当然レギュラー争いには参加できず、当時のエスパルスには8人のFWがいたのですが、僕の位置づけは8番手のFW。正直言って、1~2年で消えてしまうような選手だったのです。

ただ奇跡的というか、運命的というか、僕の入団と同時にエスパルスに陸上経験者のフィジカルコーチが就任しました。それが陸上短距離でバルセロナオリンピックに出場した杉本龍勇さんでした。杉本さんはそのオリンピックで100メートルと4×100メートルリレーに出場し、リレーでは当時のアジア記録を塗り替え、日本に戦後初の6位入賞をもたらした選手でした。

チーム始動日のミーティングで、杉本さんが選手たちの前で指導方針の話をしたのですが、僕はその内容に衝撃を受けました。それまでまったく聞いたことのない走り方の理論で、これで自分は変われると確信が持てたからです。そのミーティング直後、僕は杉本さんを呼び止め、「僕、足が速くなりたいんです」と思いの丈をぶつけました。それを聞いた杉本さんは迷いなく「なれるよ」と言ってくれた、その瞬間、自分の視界がパッと明るくなりました。これで自分のコンプレックスを払拭できるかもしれない――。

翌日から、全体練習で行うフィジカルトレーニングには、誰よりも真剣に取り組み、さらに杉本さんに走り方と体の使い方のアドバイスをもらうようにしました。シーズンオフには、杉本さんが指導していた大学の陸上部におじゃまして、1週間、学生たちと一緒に寝泊まりして、トレーニングを積みました。

ただ、僕は8番手のFWでしたし、マイナスからのスタートだと認識していたので、すぐに結果が出るとは思っていませんでした。まずは監督やチームメートに認められて試合に出ることを目標にし、そしてそれが徐々にできるようになれば、結果を残そうと思いました。そのために、走り方、体の動かし方のトレーニングを本当に地道に続けました。内容は、誰でも一度はやったことのあるシンプルなトレーニングなのですが、いっさい手を抜かずに正確にやるように心掛けました。

そうして1年、2年が過ぎ、自分でも走り方、体の動かし方がわかり始めた3年目。ようやくプロ初ゴールを決めることができました。左クロスに走り込み、相手よりも一瞬早く触るダイビングヘッドでの得点でした。結局そのシーズンは21試合に出場し、5ゴールを挙げることができました。この結果は間違いなく、2年間地道に行ったトレーニングがもたらしたものでした。

速く走る3つのポイント「姿勢」「リズム」「股関節」

ではいったいその2年で何が変わったのかというと、最も大きかったのが、正しい走り方ができるようになったことでした。速く走るためのコツは大きく3つのポイントがあります。それは『姿勢』『リズム』『股関節』です。

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