光のスペシャリスト「ウシオ電機」隠れた実力 プロジェクションマッピング支える名門企業

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パリのエッフェル塔の120周年記念イベントでもプロジェクションマッピングが活用された(写真:ウシオ電機)

そして現在、ウシオにおけるプロジェクションマッピングをはじめとするエンターテインメント分野は、さらに重要性を増している。

近年、ウシオの業績を牽引してきたのは、映画向けプロジェクターと、その部品として用いられるランプだった。しかし、ランプを使わない製品が登場したことで状況は一変。装置も、消耗品のランプも大幅な伸びが見込めなくなった。ウシオは岐路に立たされているのだ。

倍々ゲームで伸びる市場でシェア拡大なるか

市場環境の変化を受けて、4月末には新中期経営計画を発表した。2019年度に売上高2000億円(2016年度比15%増)、営業利益150億円(同74%増)を目指す、かなり強気の計画だ。計画では新規事業の育成に重点が置かれている。浜島健爾(はましま・けんじ)社長は「既存事業が鈍化していく中で、新規事業にリソースを振り分けて生産性向上の芽を育てる。光を使った提案型ビジネスに転換していきたい」と意気込む。

その中核を担うのがプロジェクションマッピングを含むエンタメ分野だ。ただ、エンタメ分野でも毎年、さらに高いレベルの技術が求められるようになっている。映像だけでなく、照明や音響との密接な連携が求められるのだ。

そこでウシオもアクセルを踏み込む。4月には新たに、照明や映像・音響を手掛ける子会社を統括する「ウシオエンターテインメントホールディングス」を立ち上げた。今後は子会社同士の連携を加速することでハイエンドなサービスを提供する。電球から音響まで一気通貫でサービスを提供できるのはウシオだけだ。この強みを生かし、一段のシェア獲得を狙う。

前述のシード・プランニングによれば、2017年のプロジェクションマッピングの市場規模は5640億円(プロジェクターや周辺機材、コンテンツ、町おこし効果なども含む)。市場は倍々ゲームで伸びており、プロジェクションマッピング協会は「2018年には1兆円を超える」と予想する。

強烈に伸びていく市場の中で、ウシオはどれだけシェアを獲得することができるか。そして強気の中期計画は達成できるのか。「光のスペシャリスト」にとって、まさに腕の見せどころだ。

藤原 宏成 東洋経済 記者

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ふじわら ひろなる / Hironaru Fujiwara

1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。銀行など金融業界を担当。

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