クラブツーリズムがバス旅を高級化する狙い 飛行機、鉄道に続きバスツアーも高級路線

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冒頭のロイヤルクルーザー碧号も、なの花バス交通(千葉県佐倉市)が所有し、クラブツーリズムは運行を委託する形を取っている。これは創業当時の1980年代、バス業界への参入規制が厳しかったため、運行を委託する方がツアーを組成しやすかったことに起因している。

店舗もバスを持たず、膨大な顧客基盤を武器に成長を遂げてきたクラブツーリズムだが、最近では外部環境の変化に直面している。

2014年には関越自動車道で、2016年1月には軽井沢付近でツアーバスが死傷事故を起こした。同社にはまったく関係のない事案だったが、顧客側にはこうしたバスツアーへの参加を手控える動きが広まった。

バス事故による規制強化が痛手

さらに事故を受けて、国土交通省がバスの運転手の乗務時間や運行距離数について厳しい規制を導入したことで、バスの借り上げの費用が大幅に上昇。「1.5~2倍に上昇したことで、ツアーも値上げせざるをえなかった」(会社側)。2017年3月期決算では経常利益25億円と2012年3月期以来の低水準に沈んだ。

そのため、需要変動の少ない、冒頭のような高価格帯のツアーを増やしたり、テーマ旅行の拡充を進めている。特に売上高の4割程度を占めるテーマ旅行は2020年までに7割前後に引き上げる計画だ。

ただ、クラブツーリズムのビジネスモデルは日本国内や日本発着の海外ツアーを中心にしており、訪日観光客(インバウンド)や海外発着ツアーといった分野での取り組みは遅れている。「クラブツーリズムのビジネスモデルでは海外進出ができない。長期的にはその点が課題となる」(鮫島准教授)。

国内の環境変化に対応し、さらなる成長を遂げることはできるのか。バスツアーの巨人の成長戦略が問われている。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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