てるみくらぶ、異常過ぎた「赤字販売」の結末 債務超過125億円に粉飾、無謀だった拡大戦略
「今年1月にメルマガで送られてきた商品を見て、あまりの安さに目を疑った」。10年近く、てるみくらぶで海外旅行のツアーを利用してきた40代の女性はこう語る。
この女性が予約したのは、バルト3国やポーランドをめぐる8日間のツアー。成田空港発着で添乗員も同行する。5月中旬の出発で価格は2人で約28万円だった。「他社なら1人分の価格。今思えば、安すぎた」。
クレジットカードで母親と2人分の代金を1月末に支払った。その後、10月に催行される英国の湖水地方をめぐるツアーにも料金の安さからいったん予約した。だが、予約の翌日に現金で一括振り込みという条件を見落とし、これは自動的にキャンセルになった。
「(母親との旅行だったので)友達を巻き込まなかったのが不幸中の幸い」と、その女性はいう。だが被害額は約28万円。決して少なくない。
同業よりもツアーが10万円安かった
業界内でさほど知名度が高くなかった旅行会社てるみくらぶが、突然話題を集めたのは3月24日のこと。同社が顧客に対して「チケットが使えなくなる可能性がある」とメールを送ると、SNSを通じて一斉に情報が拡散した。
結局、同社は3月27日、東京地方裁判所に破産を申し立てた。負債総額は151億円。東京商工リサーチによれば、その後のグループ会社の破綻も含めれば、関連の負債総額は214億円に達する。
同業他社の首脳は「もはや誰もやらない安値販売をやっていた。最後は航空券の仕入値を割る価格だった」と指摘する。冒頭の女性も、「他社に比べて東南アジアで1万円、欧州方面では10万円も安かった」と振り返る。
破綻の理由は何だったのか。てるみくらぶがネットで海外旅行のツアー販売を本格化した2000年代中頃、空の旅といえば「ジャンボジェット」の愛称で親しまれたボーイング「747」を中心として大型飛行機だった。加えてハワイやグアム、サイパン、バリといったリゾート地域にも多くの路線が開設されていた。
こうした路線の搭乗率を少しでも上げるため、日本航空(JAL)や全日本空輸(ANA)といった航空会社は航空券を安売りし、旅行会社が安いツアーを大量に企画した。だがこうした時代はとっくに終わっていた。
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