中国、豚肉需要が頭打ちの理由は「健康志向」 冷凍餃子メーカーは野菜の比率を上げて画策
「市場の需要は引き続き非常に弱い。この要因の1つは、肉の摂取を減らした方が健康的だと人々が考えているからだろう。これは新しいトレンドだ」。香港のラボバンクで食品・農業関連調査のエグゼクティブ・ディレクターを務めるパン・チェンジュン氏はそう語る。
またニールセンの調査では、昨年、冷凍餃子全体の売上高が7%伸びたのに対して、野菜のみを具とする餃子は30%成長している。
「野菜製品の需要は伸び続けており、われわれに大きな成長の余地をもたらしている」と語るのは、餃子メーカー業界第2位の思念食品で製品マネジャーを務めるチョウ・ウェイ氏。
ハーモニー・ケータリング(広州)によれば、同社が運営する300カ所の食堂で毎日食事をする100万人の労働者に対して、肉の提供量が減ったのは「健康志向」が主な要因だったという。
ハーモニーのリー・フアン副社長によれば、同社の顧客であるテクノロジー企業、銀行、石油大手企業の社員たちが消費する肉の量が5年前に比べて10%減少する一方で、緑色野菜の量は10%増加したという。「主としてメディアにより、健康というコンセプトが人々の意識に入ってきたことが理由だ」と彼は言う。
今のところ、食生活に対する関心を高めているのは、主として都市部のホワイトカラー労働者である。たとえば大学のキャンパスでは、ベジタリアン向けの食堂が急増している。だが政府は、食習慣の変化が全国的に広がることを望んでいる。
米ハーバード大学の研究者らが昨年警告したように、中国では子どもの肥満が急増しており、国民は心臓疾患の増大にも直面している。原因として指摘されたのは、赤身肉の消費増大と高い塩分摂取量だ。
「健康的な食生活、体重、骨」を目指せ
中国保健省は4月、健康なライフスタイルを目的とする第2次10カ年計画を開始した。脂肪、塩分、糖分の摂取を控え、「健康的な食生活、健康的な体重、健康的な骨」を目指すよう促す取り組みだ。
中国政府は、2030年までに栄養に対する意識を顕著に改善し、国民1人当たりの塩分消費量を20%削減し、肥満率の上昇を鈍化させたいとしている。
一部の企業は、量よりも利益率の高い豚肉製品へとシフトすべく、販売する製品の構成変更を急いでいる。また、これまではあまり人気のなかったラム(仔羊)肉や牛肉の販売量も増大している。
ハーモニー・ケータリングのリー副社長は、豚肉の提供量は減らしているものの、料理に用いる牛肉やラム肉は増やしているという。
「人々は通常、牛肉のブリスケットのように、脂肪分の少ない牛肉やラム肉を食べているが、豚肉の場合は、『紅焼肉』(ホンシャオロウ)などで、脂肪分の多い部位と少ない部位の双方を取っている」と北京の栄養士チェン・シコン氏は、広い範囲で消費されている豚三枚肉蒸し煮を例に挙げ、そう説明する。
中国の豚肉生産者として首位に立つWHグループは高付加価値市場へと移行し、ソーセージやハムなど欧米スタイルの製品を中国で販売している。その多くは、2013年にWHが買収した米国の豚肉生産最大手スミスフィールドからの輸入品だ。
一部の生産者によれば、最近の豚肉消費の減少には、生産量の急減も部分的に影響している可能性があるという。2013年から2015年にかけて赤字経営が続いたため、農家はブタの肥育頭数を数百万頭も減らしたため、供給が打撃を受け、2016年には豚肉価格が過去最高水準まで上昇した。
だが中国の消費者のあいだでは、食品の価格に無頓着な人が増加している。近年、食肉に関連する安全性の問題が頻発したことで、都市部の中国人は食品の品質に非常に敏感になっている。
昨年ニールセンが中国で行った調査では、望ましくない成分を含まない食品であれば、価格がもっと高くてもよいとの回答が8割を超えた。世界平均の68%に比べて、かなり高い数値だ。
「中国は新たな段階に入っており、豚肉にせよ他の食品にせよ、もはや『たくさんあるほど良い』という単純な話ではなくなっている」と米農務省で上級エコノミストを務めるフレッド・ゲイル氏は指摘する。
(翻訳:エァクレーレン)
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