「一流の中の一流」と一般人のメンタルの差 香川真司が逆境から何度でも甦る理由

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共通項はもうひとつある。

“トップ中のトップ”は、自身が生まれながらの天才肌であることを全面的に否定する。たとえばサッカー界で「黄金世代」と称される1979年度生まれの代表格、元日本代表の小野伸二は少年時代を次のように振り返った。

「自分が1番だと思ったことはありません。だって、生まれた地域で注目される存在だったとしても一歩出ればもっとすごいヤツがいて、範囲を広げればさらにすごいヤツがいるでしょ。たとえば、市の選抜チーム、県の選抜チーム、地域の選抜チーム、世代別の日本代表とステップアップしても、上の学年を見ればもっとすごいヤツがいる。世界を見れば、もっととんでもないヤツはいくらでもいる」

何となく湧いたイメージは、次の言葉で明確になった。

「たぶん、同じ学年だけを見て自分と比べるという感覚がないんだと思います」

ケンブリッジも奥原も北島も、おそらく同じ感覚を持っているのだろう。周囲から圧倒的な才能を持つと思われる彼らと、仮に一般人の代表とした場合の自分との違いは、どの世界でもよく言われる「上には上」という言葉のとらえ方にある。後者は「上には上」を感じて自身の可能性を見限るが、前者は「上には上」を感じて何としてもそれを超えようとする。

だから周囲から見た姿がどれほどの天才でも、本人がそれを自覚することはない。インタビューを通じてよく耳にする「自分には才能がない」という彼らの言葉は、言葉に特別な意味を持たない社交辞令の謙遜ではなく、特別なメンタリティを象徴する本音だ。

「才能はなかった」

サッカー日本代表の10番を背負う香川真司も、やはり同じニュアンスの言葉を強調した。

「よく勘違いされてしまうんですけど、僕は本当に、飛び抜けた才能を持っていたわけじゃないんです」

「小学生の頃も、中学生の頃も、高校生の頃も、周りには自分よりうまい選手がつねにいました」

「どちらかと言えば、チーム内では2番手か3番手。つねにライバルが僕の先を行っていて、僕はそいつにはなかなか勝てなかった」

言わずと知れた日本代表の10番である。10代にして日本代表に選出されたエリートでもあり、もっと言えば、サッカー選手としては世界にその名を知られる数少ない日本人のひとりだ。しかし「特別な才能はなかった」と、香川は言い切る。

「ただ、誰かと自分を比較してテンションが下がったり、『俺はもうアカンな』と落ち込むことは一度もなかった。逆に、負けを認めたくない、負けたくないという気持ちのほうが強くて、相手のことは認めるけど、絶対に負けたくない。『今はおまえのほうが上かもしれないけど、いつか絶対に追い抜いてやる』と、いつもそう思っていました」

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