トランプ政権に「外交プロ」がいない根本原因

シンクタンクの役割が変わっている

──保守系とは。

米国でシンクタンク業界が大きく発展したのは1970年代。保守系が台頭したのがきっかけだった。1990年代に入るとリベラル系が覚醒する。私の集計では、主要シンクタンクは現在392あり、その8割以上がイデオロギー系、つまり保守系とリベラル系のシンクタンクだ。

──両者は何が違うのですか。

今や主義主張がはっきりしている。保守系は「小さな政府、自由市場、強固な国防、伝統的な価値の推進」を重視し共和党寄り。リベラル系は「積極的な政府、プログレッシブな政策、環境保護、消費者保護、社会的正義、軍縮の推進」で民主党寄りだ。

これらに対して伝統的な中立系もある。よく知られたブルッキングス研究所、外交問題評議会、カーネギー国際平和財団、戦略国際問題研究所、ランド研究所といったところだ。客観的な研究、独創性を志向している。

保守系がシンクタンクの活動を変えた

宮田智之(みやた ともゆき)/帝京大学法学部講師。1975年生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業。慶大大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。博士(法学)。在米日本大使館専門調査員、東京大学大学院総合文化研究科アメリカ太平洋地域研究センター助教、日本国際問題研究所研究員など経る。(撮影:梅谷秀司)

──ただ、保守系やリベラル系が政治を動かすアクターなのですね。

保守系がシンクタンクの活動を変えた。政策提言でマーケティングの手法を導入して、短めのペーパーをどんどん出す。特にヘリテージ財団は短時間で読める簡潔平易なペーパーによってアイデアを売り、成功を収めた。その後に出てきたシンクタンクは保守系もリベラル系もそれをモデルにしている。

もう1つ、保守系が出てくることによって政治運動を担うという重要な役割が付与された。保守派にとってシンクタンクづくりは自分たちの政治インフラを強化する一環だった。大学の世界は伝統的にリベラル派寄りであり、保守派にとって知的基盤として居場所にならない。そこで注目したのがシンクタンクだ。保守的な知識人を集め、そこでの活動を保守主義運動の原動力にするというコンセンサスが生まれた。それが1980年代にレーガン政権で成功を収め、その後も順調に伸びた。

──対するリベラル派は。

1994年の米国議会の中間選挙において、共和党が下院の過半数を40年ぶりに奪回し、保守優位が明らかになる。リベラル派は真剣に考え直し、保守派の動向を学習する。シンクタンクが重要なのだとの認識がリベラル派の中に出てくる。その動きの先頭に立ったのがジョン・ポデスタ氏だ。2002年に米国進歩センターを立ち上げる。そこを核にリベラル系が一気に発展していく流れが生まれた。

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