日本株にイマイチ「強気になれない」理由 日経平均がここから上昇するのは大変だ

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テクニカル面で見ても、こうした「不安」が的中する可能性がある。端的に言うと、6月20日の日経平均の「ローソク足」である。

ローソク足は一日の動きなら、その日の始値、高値、安値、終値の歩みをわかりやすく示すものだ。これは実は、明治30年代に完成した日本発のチャートで、近年では欧米などでも「キャンドルスティック」として親しまれている(たとえば代表的な説明はこちら)。一般的に、陽線が強気、陰線が弱気を表す。特にトレンド発生もしくは転換点(天井もしくは底値)での長いローソク線は重要とされ、その後の方向性を示すサインともいわれている。

実は、20日のローソク足(日足)を見ると、相場転換の兆しもうかがえるのだ。「一日だけで判断できるのか」と言われそうだが、20日は前場こそ19日の終値からみて、大きく上昇したものの、引けにかけては上げ幅を縮小。結局、寄付き(2万0234円)をわずかに下回る終値(2万0230円)となった。

つまり、ほぼ“往って来い”となったわけだ。ローソク足でいうと、「上影陰線」(トウバともいわれる)を示現し、上値でシコリを残したとの見方もできる。もちろん、ローソク足は一本だけの「単線分析」よりも「複線数分析」、日足分析よりも週足分析の方が精度は高いとされており、早計な判断は禁物だ。

海外投資家の買いは一服した

確かに、20日の日経平均株価は2万0230円と年初来高値を更新した。大型株では出遅れていたセクターにも物色が拡がり、年初来高値銘柄数も連日100銘柄を超え、東証2部指数も最高値圏で推移している。

しかし、6月に入ってからは、海外投資家がいったん売り越しに転じている。信用売り残(東京、名古屋のニ市場)も8年9ヵ月ぶりの高水準となる1兆円台まで積み上がっていたものの、足元では0.95兆円(6月16日申込時点)へしぼんでいる。実需買いというよりも、売り方(カラ売りで儲けようとする勢力)の買い戻しが一巡しつつあるとの見方もできる。今後、もし売買代金が縮小傾向をたどれば、日本株の潮目が変わる「夏枯れモード」に入ることも想定される。

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在職日数が2000日を超え、1強といわれ磐石に見えた安倍政権も、このところ、学校法人問題等で揺れている。さらに7月2日の東京都議会選挙の投開票を控え、「都民ファーストの会」の勢いに注目が集まる。

足元では安倍内閣支持率も急低下、都議選の結果次第ではいったん試練を迎える可能性もある。戦後の日本株は「長期政権=株高」がある程度あてはまるものの、 ほぼ1年間に及ぶ「戻り相場」にいったん水を差すことも想定しておくことも必要だ。

さて、私が所属している非営利の団体・日本テクニカルアナリスト協会(NTAA)では、「テクニカル分析について学びたい」という読者の方々のために、ハンドブック(初級編②)を作成しました。前回大好評をいただいた基礎編、初級編①に続く、3冊目になります。無料で配布しておりますので、興味のある方は、NTAAのHPからぜひお申し込みください。なお、基礎編、初級編①はNTAAのHP内(出版事業をご参照)で読むことが可能です。

中村 克彦 みずほ証券 シニアテクニカルアナリスト

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なかむら かつひこ / Katsuhiko Nakamura

IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA)、日本テクニカルアナリスト協会(NTAA)評議員。

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