自分の「年収の増加率」を知っていますか? 「異色すぎるNHK経済番組」が問いかけたこと
「そのモデルを疑う視点はないのだろうか?」
――NHK『欲望の資本主義』は、コンセプトも映像表現も非常にユニークでした。
丸山:数年前から、経済そのものをさまざまなフレームで問い返すことはできないか、もやもやと思ってはいたんです。そんなとき、たまたま観たハリウッド映画『インセプション』(2010)から着想をもらって、「無意識」と「経済」を絡めた番組ができないか、と妙なインスピレーションが生まれたんです。
「欲望」は時代が、社会が「植え付け」るもの、だとしたら……その始まり、発端(=インセプション)まで視野に入れたとき、見えてくる構図は……?
だから原案では「欲望のインセプション」というタイトルでした。そこから試行錯誤が始まり、大西さん、安田さんとのコラボレーションを経て今回の形になりました。
――「『異色すぎるNHK経済番組』は、こう生まれた」によると、丸山さんは30年前、学生だったバブル期から経済のジレンマを感じられていたそうですね。経済成長が難しい時代になり、その頃の思いが湧き上がってきたと。
丸山:そんなカッコイイ話じゃないと思うんですが(笑)、当時から近代経済学を学びながらも「これだけで本当に説明できるのか?」「時代のパラダイムゆえの限界は?」と漠然と感じていました。番組の中に、「アダム・スミスは間違っていた」という話がありますが、ひとつのモデルは大事だけど、どこかでそのモデルを疑う視点はないのだろうか、と。この思いが30年間、地下水脈のようにあったことは間違いないですね。
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