プロレスのリングに上がるアイドルの心理 松井珠理奈が飛び、宮脇咲良が叫ぶ

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「技術では他の選手に簡単に追いつけないので、わかりやすい努力をしようと思いました。練習も全部参加して移動も他の選手と一緒のバスに乗って、会場の椅子出しもしたし、仕事も両立して、空き時間は一切ないようにしてました」

もがいてる姿隠すなと

そのファイトスタイルはファンの心をつかみ、プロレス界では最も権威のある「プロレス大賞」女子部門を2年連続で獲得した。愛川さんも、プロレスは「人間の根本にある喜怒哀楽すべての感情を出して勝負したい人たちの集まり」と表現する。

「どこかコンプレックスがある人が、何かに勝ちたいと思ってやる競技がプロレス。私もたくさん挫折したけど、そのすべてをさらけ出して観客に響かせることが快感でした」

赤井沙希さん(30)/DDTプロレスリング所属(写真:写真部・小原雄輝)

心身の限界から13年に引退した愛川さんと入れ替わるようにデビューしたのが、人気プロレス団体「DDTプロレスリング」に所属するモデル、タレントの赤井沙希さん(30)。昨年に先輩レスラーとの一騎打ちで敗れた後、リング上で「なんでもがいてる姿を隠そうとするの」「(負けて泣いている)その汚い面をカメラに見せなさいって言ってんの」と公開説教を受けた。

「それまではきれいなところだけを見せるのがプロレスと思っていたので、衝撃でした」

長身のプロポーションに加え、父はプロボクサーとしても活躍したタレントの赤井英和という話題性もある。だが、彼女がファンを引き付けるのは追い込まれた時に出た「本性」だ。初めて他団体に出場したときはその団体のファンからツイッターで罵声を浴びせられノイローゼ寸前になったが、試合が始まり相手選手にたくさんセコンドがついているのを見て気が楽になり、顔面を張り合う大熱戦を見せた。

「こっちはセコンド1人なんだからあんたも1人で来いや、と思いましたね。人は簡単に死なないな、と思って戦っています」

DDT傘下の女子プロレス団体には「沙希様」という「よく似た選手」が登場し、相手選手を「白ブタ」「ペリカン」「汚い格好でリングにあがらないで」と罵ってファンのブーイングを浴びる。セリフは事前に作ったものではなく、「思ったことをそのまま言っている」という。

「リング上は学校じゃない、みんな横並びじゃないんだから、もっと人をねため、恨めとほかの選手に言いたいですね」

女性アイドルの「旬」は男性以上に短い。きれいな一面だけを見せる仕事に飽き足らなくなった時、彼女たちは全人格と感情をかけて戦えるプロレスのリングを目指すのかもしれない。

(編集部:福井洋平)

※AERA 2017年6月26日号

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