出光、株主総会で創業家vs.経営側の対立再び 創業家は合併潰しへ5名の首を狙う

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それだけでこの新任の取締役候補を否決するのか。実は本間氏夫妻は昨年4月初旬に開かれた昭介名誉会長の二男・正道氏の結婚披露宴では媒酌人を務めている。国際需給部は正道氏が勤務する職場、いわば正道氏と本間氏は今も職場の部下、上司の関係にある。

だが、本間氏は出光興産と同じビルの9階にある出光美術館の理事長室にいる昭介氏の元を数回訪れ、合併賛成の意思を表明したといわれる。今回の反対の中には、本間氏のこうした行為に対する創業家側の感情論が入り交じってはいないか。

創業家側は社内取締役4名の選任反対理由に、「経営統合以外の経営判断の誤り」も付け加えている。具体的には、①海外事業の失敗、②天坊昭彦、中野和久両相談役の意向を踏まえた経営意思決定・ガバナンス欠如、③両相談役への高額報酬・破格待遇などだ。

海外事業の減損リスクを指摘

6月5日に会見を開いた創業家の代理人、鶴間洋平弁護士(撮影:今井康一)

海外事業に関しては6月5日の会見資料に「本年度の業績に適切に反映されていないか、明らかに発生することが見込まれる損失の反映を意図的に遅らせているのではないか」と記載。相談役の報酬や海外減損に関しては、「総会でこの点を経営陣に対し質問する」(鶴間弁護士)という。

こうした創業家側の指摘に対しては「コメントしない」が会社の公式見解。ただ減損発生を強く疑わせるような創業家側の姿勢には「なぜこういうことを言うのかよくわからない」と会社内部からは不思議がる声が挙がる。

出光の業績は2015年度の359億円の最終赤字から2016年度は881億円の黒字にV字回復を果たした。原油価格上昇や円高一服などで在庫評価損益が急改善したことが大きいが、業績面では経営側に有利な状況になっている。今回は創業家側への賛同の輪は昨年ほど広がらないという見方も出ている。

出光は5月、昭シェルと調達や製品の相互供給などの協業で合意したと発表している。だが、こと合併に関していえば、創業家の反対が続く以上、まったく前に進まないのが実情だ。

創業家側、出光経営陣とも決定打に欠ける中でつばぜり合いを続けている。一般株主や出光、昭シェルの社員、販売店関係者の目に、両者の行動はいったいどう映るか。

大西 富士男 東洋経済 記者

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おおにし ふじお / Fujio Onishi

医薬品業界を担当。自動車メーカーを経て、1990年東洋経済新報社入社。『会社四季報』『週刊東洋経済』編集部、ゼネコン、自動車、保険、繊維、商社、石油エネルギーなどの業界担当を歴任。

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