性暴力被害女性が犯人を「赦す」道を選ぶ理由 アカデミー賞を拒否した女優が性暴力を語る
これまではやはり「西欧の人たちは西欧のことしか考えていないのでは、私たちのことなんてどうでもいいと思っているのでは」と感じてしまっていた部分がありました。でも、今回こうして私たちと一緒になって、アメリカの皆さんが反発の意志を表明してくれて、私たちを守ろうとしてくれたことは本当に嬉しかったです。
――あのボイコットは、ただ単に“配役を演じる”ということを超えた、俳優としてのミッションを感じてのアクションだったのでしょうか
私はもちろん役者ですが、それ以前に私は一人の人間だし、自国の国民のことを考えないといけないと思っています。
それは私だけではなく、イランの芸術家も政治家も、ステータスのある人たちは考えていることなんです。
私たちはいつも政治問題を考えています。一歩一歩でいいから、みんながいい生活をできるように自分たちにできることは何か――。
私たちが幸せになれば、みんなが幸せになれる。私たちはひとりではない、そう思っています。
「暴力には暴力で」、ではない態度を示そうとした
また、アカデミー賞とちょうど同じころ、イランで開かれるレスリングの国際大会があって、アメリカのチャンピオンも出る予定になっていました。イラン政府は、自分たちの国民がアメリカへの入国を拒否されているのにも関わらず「我々は扉を閉めない」と言ってアメリカ選手に入国ビザを出しました。
「暴力には暴力で」、ではない態度を示そうとしたイラン政府の態度は、ラナのそれにも通ずる部分があったかもしれません。
そういったことや、私たちのアカデミー賞ボイコットの反響なども含めて、みんなが一緒になった気持ちでした。
あの時、私たちは、色んな国籍を超えて一つになったんです。
――最後にアリドゥスティさんが今後挑戦してみたいことをお聞きしてもいいですか。
もちろん俳優として、これからどんどん色んな面白い役をやりたいです。それから役者業のかたわら翻訳の仕事もしているのでそれも頑張ります。
私、一つのことだけで飽き足らない性格なので、色んな所に鼻を突っ込んで、好奇心を持ってこれからもチャレンジを続けたいと思います。
(文:南 麻理江)