「デリケートゾーン用」の石鹸は、なぜ必要か ボディソープがニオイやかゆみの原因にも
米国ではドラッグストアに専用洗浄剤のコーナーがある。日本で生理用の紙ナプキンが並べられているのと同じだけのスペースを占めていると言えば、選択肢の多さがわかるだろう。フランスでは初潮を迎えるとかかりつけの婦人科を決め、そこで月経や避妊の方法、感染症といった性についての基礎知識とともに、専用洗浄剤の存在と「それを使わなければならない理由」を習うという。
2013年、西村さんはロサンゼルスを拠点に「ラヴエル ラボ」を起ち上げ、デリケートゾーン専用せっけん「ラヴエル」を発売した。手作り、無添加にこだわった固形せっけんで、泡立てネット付き。汚れをさっぱり流す洗浄力と粘膜への優しさの両立を目指し、保湿成分もふんだんに配合した。
「当時も専用洗浄剤が市場にないわけではありませんでした。でもそれらは“夜のお供”商品として販売されていました。要は“セックスの前にきれいにしましょう”という意味で、主な販路はアダルトショップ。でもデリケートゾーンのケアは、蒸れやかゆみ、においといった不快感を軽減するため、日常的に行うものです。毎日使ってもダメージのないせっけんを作るだけでなく、そのことを伝えるためにも日用品として手に取りやすいようパッケージデザインを考え、販売ルートを開拓しなければならないと思いました」(西村氏)
美容系雑誌から掲載を断られた
しかし、壁は厚くて高かった。ドラッグストアやバラエティショップのバイヤーは一様に消極的だった。周囲から「デリケートゾーンにトラブルがある人」と思われたくない女性は、この商品をレジに持っていかないだろう、と言うのだ。メディアを通して女性を啓発したいと考えたが、美容系雑誌からもスポンサーの意向を理由に断られた。日本では「性的なものは、隠さなければならない」のだと西村さんは痛感した。
「同じ商品をアメリカと台湾でも販売しているのですが、こちらではすぐに売り上げが伸びました。専用洗浄剤が必要な理由をほとんどの女性が知っているからです。日本でも、2014年ごろからは欧米の洗浄剤が販売され、テレビCMが流れるようになり、選択肢が増えました。が、それらの他社商品も含め店頭での動きを見ると、世界的な水準に達するにはまだ時間がかるとみています」(西村氏)
欧米の事情に明るい西村さんの目にはじれったく映っているものの、日本のデリケートゾーンケア市場はゆっくりながら確実に変わりつつある。ユニ・チャームは2000年に「ソフィ デリケートウェットシート」の無香料タイプを発売。携帯用のデリケートゾーン専用ウェットシートで、ムレやベタつきといった不快感を解消するため、同社の不織布技術を生かして開発された。繊維が柔らかいため、粘膜にダメージを与えにくい。水解性なので、使用後はそのままトイレに流せる。
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