看護師志望の学生がデリヘルで働く深刻理由 学業を優先すると、できるバイトは限られる
「学業に打ち込んでいる学生さん」の雰囲気
背にリュック、肩からショルダーバッグ、手にはエコバッグ。取材場所に現れたクルミさん(24歳、仮名)が携えてきた荷物は、どれも重そうだった。筆者の視線に気づくと彼女は、「今、実習中なので……」とバツが悪そうに説明する。准看護師資格取得のための実習先から、直接、アルバイト先であるデリヘル(デリバリーヘルス)店に出勤してきたのだという。
顔はほぼノーメークで、ロングヘアにはゴムできつく結んでいた跡がくっきりと残っている。取材が終わったら別フロアにあるメークルームで身支度を整えるというが、筆者の目の前にいる女性にデリヘル嬢らしさはまるでなく、いかにも「学業に打ち込んでいる学生さん」といった雰囲気だった。
「カサブランカ・グループ」では、クルミさんのほかにも看護職を目指す学生や、実際に医療の現場で働く現役看護師も少なくないという。学費のために、あるいは賃金の低さゆえに、彼女たちはダブルワークを選択する。
クルミさんは短大を卒業後、中小企業に事務職として就職したものの社内の雰囲気が合わず1年足らずで辞職。その後は、フリーターとしていくつかの仕事を掛け持ちした。ヘルパー2級の資格を取り介護施設でアルバイトをしているときに、自分は人の世話をするのが好きだと気づき、それを仕事にしたいと考えるようになる。が、介護職がいかに激務で、しかも賃金が低いかを目の当たりにしたため、看護の道を志す。
専門学校の学費は、両親に頼み込んで半分出してもらった。残りは自分で稼がなければいけない。出勤を減らしながらも介護のアルバイトは続け、もうひとつ居酒屋のバイトを増やした。
「実家から学校が遠かったので、一人暮らしも始めました。それまではバイトといえどフルタイムで働いていたので、通学しながらも学費半分と一人暮らしの生活費ぐらいなら何とかなると思っていたのですが……。すぐに自分が甘かったと気づきました」
この日、クルミさんは見るからに疲れていた。それでも筆者の問いを一言も聞き漏らさないよう耳を傾け、口先だけでなく懸命に考え答えてくれる。そのきまじめさがアダとなり、クルミさんはそれぞれの職場で「いいように使われ」てしまう。
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