看護師志望の学生がデリヘルで働く深刻理由 学業を優先すると、できるバイトは限られる

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「その3日後にはもうお店に連絡して、また働きたいとお願いしていました。別店舗に移籍させてもらって、名前も変えて。サービス料が高いお店に移れたのはいいのですが、それで今までリピートしてくれていたお客さまが離れちゃったのは痛かったです」

言葉を切るたびに、クルミさんの口からはため息が漏れる。

「プロフィール写真をいっさい載せないことにしたんですよ。親はまだ私のこと信じていなさそうだったから、絶対にいろんなお店のホームページをチェックしているはず……。新規のお客さまを回してもらってはいますが、実習や課題で私の出勤が不規則すぎて、リピートしてくれるように持っていくのがほんと難しい」

デリヘル以上に効率がいい仕事がない

すっかり袋小路に入ってしまっているようだった。これだけ稼げないなら、ふつうのアルバイトを探したほうがいいのかもしれない。でも、実習と資格試験が終わるまでは学業を優先したい。働ける時間が不規則で短いとなると、デリヘル以上に効率がいい仕事は考えられない。

「2月に資格試験があって、3月で卒業する予定です。クラスメートはほとんど就職が決まっているのに、私はまだ。看護の知識がぜんぜん身に付いていないんですよ。1年休学したブランクは大きかったし、それを埋められないままここまで来てしまいました。“仕事しながら覚えていけばいいよ”と言ってくれる人もいるけど、そもそも試験に受かる自信もない……。こんなことまでして学校に通い続けてきたんだから、絶対に合格しないといけないのに」

カサブランカ・グループ代表の長谷川華さんは「将来が不安」という理由で風俗を始める20代女性が少なくないと話してくれた。実際に差し迫った経済的理由がないにもかかわらず、将来のために貯金をしておこうとデリヘルで働く女性たちの話も聞くことができた。が、クルミさんを前にすると「将来への不安」について聞くのはためらわれた。

「将来も何も、今のこの状態が不安でしょうがないです。明日のおカネ、来月の試験、春からの就職……何も見えませんから。なんでこうなっちゃったんだろう。私が悪いのかな」

同じく看護職を目指していながら、クルミさんとはまったく違った状況にある女性・ミユさん(22歳、仮名)の話も聞くことができた。彼女は看護を学ぶ大学4年生で、合間にデリヘルのバイトをしている。多い月で70万円を稼ぐが、比較的裕福な両親と暮らしているため、稼ぎはそのままお小遣いとなる。服飾品に20万円を費やす月があり、今いちばん欲しいものは新車だ。春からは実家から通える病院に正看護師として勤務することが決まっており、初任給は15万円。2年目に入って夜勤ができるようになれば給料が飛躍的に増えるが、それまではデリヘルのバイトに入って足りない分を補いたいという。

どちらの女性もまじめに看護を志している。デリヘルの仕事にもまじめに取り組み、ルックスもよく、好感度は抜群だ。しかし、そもそもの家庭環境や進路を決めた時期など、クルミさんの置かれた状況はいろんなことがちょっとずつ不利で、その積み重ねで圧倒的に困った状況になっている。

もしクルミさんがもっと早いうちから看護の道に進むことを決めていたら。両親に経済力があるか、彼女がフリーター時代にもっと貯金しておくかして、おカネのことを考えずに学業に専念できたら。そうでなくともデリヘルの仕事でうなるほど稼げていたら……。考えてもせんないタラレバばかりが浮かんでくるが、それを最も強く感じているのは当のクルミさんに違いない。

三浦 ゆえ フリー編集&ライター

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みうら ゆえ / Yue Miura

富山県出身。複数の出版社を経て2009年フリーに。女性の性と生をテーマに編集、執筆活動を行う。『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』シリーズや『失職女子』などの編集協力を担当。著書に『セックスペディア-平成女子性欲事典-』がある。

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