池上彰・佐藤優は、「読む本」をどう選ぶのか 2人の「知の源泉」を一挙公開、その秘訣は?

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佐藤:最後に、本を選ぶ、いちばん重要なコツは、「時間と財布が許す範囲で、とにかく本をたくさん買う」ことです。

【本の選び方7】「迷ったら買う」を原則に、できるだけ多く本を買う

池上:まったくの同感です。私も、店頭で本の題名や帯のコピーを見て、知りたいテーマの目に留まった関連本を、とにかく片っ端から買っていくやり方です。

佐藤:私も「迷ったら買う」を原則にしています。人間は「ケチ」な動物なので、本を買うと、「元を取ろう」として一生懸命に読むようになります。それによって、知識の吸収率も高くなる。誰でも「おカネがもったいない」という気持ちはありますが、それを逆手に取って、知力の向上につなげるわけです。

池上:そのとおりですね。いい本に出合うためのコツはただひとつ、「本をたくさん買うこと」ですから。全体としては類書と同じようなことが書いてあっても、ところどころに新しい情報や目新しい意見が書かれていることもあります。そういう本に出合うのは喜びでもありますよね。

「本の情報は安い」ことを知る

佐藤:たくさん買えば、なかにはハズレの本もあります。それでも本から得られる情報は「安い」ですからね。どの分野の本でも、1冊に書かれているのと同じだけの情報を人から得ようと思ったら、食事代や謝礼など、本代の何倍も費用がかかります。

池上:セミナーや講演会でも、何千円かの受講料を払って90分の話を聞いても、その情報を本のページ数に換算すると大したことはありません。

佐藤:アメリカの大学院に留学するには1000万円以上の費用がかかりますが、そこで使われているテキストだったら、数千円で買うことができます。「本の費用対効果は非常に高い」ことを、もっと多くの人に認識してほしいですね。

池上:いい本を見つけて基礎知識をしっかり身に付ければ、新聞などでニュースを見たときにも、因果関係がすぐに理解できるようになります。基礎がわかるまでが大変ですが、それをやっておくかどうかで、あとあと大きな違いが出てきます。「急がば回れ」で、しっかり本を読んでほしいですね。

佐藤:基礎知識を身に付けることは、実はいちばん難しく、しかし大切なことでもあります。でも、基礎知識があるからこそ、難しい本を読みこなせたり、速読で大量の本を読みこなすこともできます。私たちの「本の読み方」「本の選び方」を参考にしつつ、「土台となる基礎知識」をいっきに身に付けてほしいですね。

池上 彰 ジャーナリスト

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いけがみ あきら / Akira Ikegami

1950年、長野県生まれ。1973年慶応義塾大学卒業後NHK入局。ロッキード事件、日航ジャンボ機墜落事故など取材経験を重ね、後にキャスターも担当。1994~2005年「週刊こどもニュース」でお父さん役を務めた。2005年より、フリージャーナリストとして多方面で活躍中。東京工業大学リベラルアーツセンター教授を経て、現在、東京工業大学特命教授。名城大学教授。2013年、第5回伊丹十三賞受賞。2016年、第64回菊池寛賞受賞(テレビ東京選挙特番チームと共同受賞)。著書に『伝える力』 (PHPビジネス新書)、『おとなの教養』(NHK出版新書)、『そうだったのか!現代史』(集英社文庫)、『世界を動かす巨人たち〈政治家編〉』(集英社新書)など。

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佐藤 優 作家・元外務省主任分析官

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さとう まさる / Masaru Sato

1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。

2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。2006年に『自壊する帝国』(新潮社)で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『読書の技法』(東洋経済新報社)、『獄中記』(岩波現代文庫)、『人に強くなる極意』(青春新書インテリジェンス)、『いま生きる「資本論」』(新潮社)、『宗教改革の物語』(角川書店)など多数の著書がある。

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