「韓国投資ファンド」が処分勧告を受けた理由 被害者は出ていないが、管理はずさんだった

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証券取引等監視委員会による参考資料。当社はFIP社、甲社はサクセス社を示している

FIP社は毎営業日に銀行預金の入出金データをサクセス社から入手することで貸し付けの実態を把握することとしていた。しかし実際には、サクセス社と貸付先との取引は現金取引が多く、FIP社は貸付金の使途や利息の原資などの実態を精査していなかった。現金取引を示す領収書も保管されていなかった。

追加で貸し付けた日と同日にほぼ同額の利息を受け取るなど、いわゆる「追い貸し」となっているおそれがあるのに、FIP社は見過ごしていた。

サクセス社は有担保で融資をしているので、担保の確認が欠かせない。だが、FIP社はサクセス社が提出する報告資料において、担保評価額が記載されていない状況を3年以上放置していた。記載がない理由を確認すらしていなかったという。

担保の多くはダイヤモンドだった!

担保の多くはダイヤモンドだったが、FIP社は鑑定による評価方法の調査や確認などをサクセス社に対して行っていなかった。また、サクセス社は鑑定書の鑑定業者名を偽造していたことも関東財務局の検査で明らかになった。担保の中には掛け軸もあったが、鑑定評価の内容に疑義がある状況をFIP社は放置していたという。

さらに、貸付金については回収の可能性を的確に把握する必要があるはずだが、サクセス社は貸付先の財務状況を確認していなかった。FIP社はこうした状況を遅くとも2014年6月には把握していたにもかかわらず、改善させていなかったという。

監視委員会によれば、まだ償還期限が到来していないFIPのファンドは9本で出資総額は10億2000万円。FIPのファンドに出資した個人は延べ500人に上る。実害が出る前の処分勧告は、FIP社やサクセス社の管理体制の改善につながるだろうか。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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