「フランスの中道化」で世界情勢はまた変わる 米国と英国はもう頼りにならない

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この新たな欧州の中道コンビ――地位を固めてきたメルケルと新人のマクロン――がすぐに力強い自信を見せたことは注目すべき点である。ほんのつい最近まで、フランスとドイツは極右に傾く可能性があると見られていた。彼らが政治的エスタブリッシュメントに勢いを与えるようなことをしたというわけではない。

経済的には、ユーロ圏は約10年間最高の状態にあり、2017年1~3月期は成長率で米国を上回っている。移民危機や、最近のテロ攻撃などによる政治への影響も多少は緩和された。欧州の極右も含め、そうした問題が再び過熱する可能性はある。だが現在のところ、政治の力は中道にあるようだ。メルケル首相とマクロン大統領はそれを利用しようとしている。

米国と英国は「間違った方向」へ

米国にとって、この状況はよく言っても五分五分だ。米国の大統領たち――特にトランプ大統領――は長い間、欧州は自立し、自分たちの安全保障やそのほかの問題についてもっと責任を持つべきだと訴えてきた。しかしながらそれが実現しようとしている現在の状況は、顔に平手打ちを食らったような気分だろう。実際のところ、それが狙いなのである。

もっと普通の状況であれば、本来は大西洋主義者であるメルケル首相もマクロン大統領も米国と英国との連携強化を望むだろう。ブレグジットとトランプ大統領の誕生によって米国と英国が大きく間違った方向へ舵を切ったと彼らは感じ、その溝を埋めようとしている。

この流れは、先週のNATOサミットでのトランプ大統領の行動でさらに高まった。トランプ大統領は文字通り他国の首脳を押しのけ、集団防衛を定めたNATO条約第5条の支持を言明せず、加盟国による防衛予算の拠出の仕組みをいまだに理解していないようだった。舞台裏で何が起きたのかはわれわれには分からないが、メルケル首相とマクロン大統領の先般の行動を見るに、あまり良い結果には終わらなかったようだ。

多くの点でそれほどの変化はないだろう。NATO同盟は引き続き欧州の防衛の中心軸であり、米国の軍事力に依存することも変わらない。外交的なレトリックとは裏腹に、米国と欧州の軍の関係は今後も深まっていくだろう。

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