「高齢同棲」が米国で驚異的に増えているワケ 結婚にはないメリットもある
カレン・キャンター(75)とスタン・トービン(75)の暮らしは、その辺の高齢の夫婦と変わらない。一緒に映画を見たり遊んだり、子どもたちや孫たちの家を訪ねたり、新しいレストランを試したりして楽しく過ごしている。
トービンは会計士で、今も税務関係の仕事を少しやっている。月に1回の仲間たちとの会合が楽しみだ。キャンターは元中学校教師で、ボランティア活動や歴史小説の執筆のかたわら、読書にいそしみ、美術鑑賞グループにも参加している。
人口学者も関心寄せる急増ぶり
何年も前にキャンターが乳がんを患ったとき、闘病生活を支えたのはトービンだった。トービンに、体重が増えすぎないように気を付けなさいと口を酸っぱくして言うのはキャンターの役目だ。
財産や法律上の取り決めもきちんとしている。フィラデルフィア美術館近くのマンションと、ニューヨーク州北部のコテージは共同所有だ。いざという時には互いに後見人となる手続きも済ませている。
「私たちは愛し合っているし、一緒にいたいと思っている。死が2人を分かつまで一緒にいる約束もしている」とキャンターは言う。
交際を始めたのは2002年で、2004年から一緒に暮らしているにもかかわらず、2人は結婚していない。米国の中高年には、彼らのような同棲カップルがたくさんいる。
ピュー・リサーチ・センターが先ごろ出したリポートによれば、51歳以上で結婚していないパートナーと一緒に暮らしている人の数は、2007~2016年の間に75%も増えた。他の年齢層と比べても最も高い増加率だ。
「驚きの発見だ」と語るのは、同センターのアナリストであるレニー・ステプラーだ。「同棲は若い人のやることだと私たちは考えがちだ」
今でもそれは間違ってはいない。その一方で、51歳以上で同棲している人の数は10年間に230万人から400万人に増えた。66歳以上に限って言えば、その数は約90万人へと倍増した。