ユニクロ「事業刷新プラン」は時間との戦いだ 実はZARAとの差が広がっている
だが、今年3月に「手のひらに世界最大のユニクロオープン」としてリニューアルしたオンライン販売には、まだ目に見える効果は出ていない。今月発表された4月国内ユニクロの既存店売上高+ダイレクト販売は6.2%増。アナリストは、ネット販売を含むダイレクト販売の増収寄与は1.1%程度にとどまっていると試算する。
「有明プロジェクトによるサプライチェーン改革が収益貢献するには時間が掛かる」(みずほ証券アナリストの高橋俊雄氏)との見方は多い。
トムソン・ロイターのスターマイン調査がまとめたアナリスト17人の18年8月期の営業利益予測の平均値は1998億円で、17年8月期の会社計画1750億円に比べて14%増益。17年8月期の会社計画の営業増益率計画は37.5%で、現時点では、増益率が縮小することになっており、今回の改革を織り込み切れてはいない。
柳井正社長は「3年後にはあらゆる産業が新しい局面を迎える」と話しており、有明プロジェクトが成果を生むまで3年程度が勝負とみているようだ。その行方について、ドイツ証券アナリストの風早隆弘氏は「(柳井氏が)目指す姿をプロのピアニストだとすれば、現在のユニクロは初級者が弾く黄色いバイエルの段階。目指す方向性は正しく、理想に向かって、3歩進んで2歩下がることを繰り返していくのだろう」と予想する。
広がる「ZARA」との格差
ファーストリテは16年8月期、売上高でギャップ<GPS.N>を抜き、アパレル業界で世界第3位となった。しかし、手放しで喜ぶことはできない。13年8月期には11.7%あった売上高営業利益率が10%を割り込み、16年8月期には7.1%にまで低下している。一方、アパレル業界首位でZARAを展開するインディテックスの17年1月期の売上高営業利益率は17.2%と、高水準を維持しており、その差は広がっている。
ユニクロとZARAを比較した著書もあるディマンドワークスの斉藤孝浩代表は「ファッションビジネスで利益を得るには、いかに値下げを少なくするか、シーズン最後の在庫をいかに圧縮できるか、このふたつで決まる」と指摘する。
斉藤氏によると、ユニクロは、アジアなどでローコストに作り込んだ商品を「売り切る」ビジネスモデルであるのに対し、インディテックスは、小ロット・短サイクルで「作り足す」ビジネスモデル。「売り切り」のモデルは、天候や売れ筋の読み違いで機会損失が発生したり、値下げ販売が増えることにつながりやすい。「ユニクロのベーシックなモノ作りは世界最強。しかし、それだけでは限界がある。インディテックスのモデルは、厳しいアパレル業界の中で勝ち残っているビジネスモデル」(斉藤氏)と分析する。