高須院長が蓮舫代表を「提訴」した勝算と意味 民進党議員の「CMは陳腐」発言が裁判に

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

しかし、この請求も認められる可能性は低いと思われます。過去にある議員が国会である医師を誹謗中傷する発言を行い、その医師が自殺してしまったことで遺族がその議員を訴えた事件がありました。

これについて、最高裁は「国会議員が国会で行った質疑等において、個別の国民の名誉や信用を低下させる発言があったとしても、これによって当然に国家賠償法1条1項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が生ずるものではない」と判断。国会議員が、その職務と関わりなく違法又は不当な目的を持って発言したり、虚偽であることを知りながらあえて発言したりしたような極端な場合以外は、国の責任も発生しないと判決しているからです。

高須院長の本当の狙いは?

高須院長が求める損害賠償や謝罪広告の請求を裁判所が認める可能性はきわめて低く、裁判上の勝ち目は薄そうです。にもかかわらず、高須院長が提訴に踏み切った狙いはどこにあるのでしょうか。

その最大の目的は「美容業界には怪しい業者や怪しい広告が多い」という風評をはっきり否定し、高須クリニックは違法なことも、不当なこともせず正しい医療行為を正々堂々と行ってきたことをアピールすることにあると見られます。

何も声をあげずに黙っていると、「大西議員の言い分を認めたのではないか」と誤解されるリスクがあります。一方で、「提訴する」という姿勢を見せれば、少なくとも高須クリニックは真っ当に営業しているという印象を与えられるでしょう。さらに、高須院長がそこまで計算していなかったとしても、世論を味方につけ、テレビやネット上で大きく取り上げられることで、CMを放映するのと同じようなPR効果まで期待できる可能性すらあります。

一方で、国会議員は選挙で選ばれるのですから、正しいか間違っているかだけでなく、好きか嫌いかで投票先を決められてしまう可能性があります。大西議員や民進党が法律上の責任を負うことがないとしても、「高須院長が誤解しているのではないか」という姿勢を貫くことで党のイメージを損ねてしまう危険があります。謝罪するのか、戦うのか。難しい選択を迫られているのは大西議員と蓮舫代表なのかもしれません。

三谷 淳 未来創造弁護士法人 代表弁護士

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

みたに じゅん / Jun Mitani

慶應義塾大学法学部法律学科出身。2000年弁護士登録後は横浜の大手法律事務所に勤め、数多くの裁判を手がける。このころ旧日本軍の爆雷国家賠償訴訟に勝訴し、数々のマスコミに取り上げられる。しかし、2006年に独立し三谷総合法律事務所(現・未来創造弁護士法人)を設立すると、裁判はたとえ勝訴しても、時間がかかり、依頼者に強いストレスをかけ、結果的におカネも回収できないケースが多いことに気づき、徹底的に交渉術や紛争予防法を研究する。1日5件、週に20件、年間1000件の交渉を実践し、「日本一裁判しない弁護士」と呼ばれるようになる。紛争の早期円満解決や予防は、トラブルを抱えるクライアントだけでなく、企業経営者からも絶大な支持を受け、現在では「経営を伸ばす顧問弁護士」として地域、業種を超えて全国各地の上場企業から社員数名の企業まで100社近くの顧問弁護士を務める。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事