高須院長が蓮舫代表を「提訴」した勝算と意味

民進党議員の「CMは陳腐」発言が裁判に

これに対し、大西議員は「具体的なクリニック名はいっさい出していない」とコメントしています。確かに、大西議員の発言中に特定のクリニック名は出ていません。しかし、固有名詞を出さなくても、多くの人が「特定の医院を指している」と感じれば、結局はその対象者の社会的地位を低下させることになります。大西議員の発言は「皆さんよくご存じのように」という言葉が入っていたことからも、高須クリニックを念頭に置いていた可能性が高く、少なくとも裁判ではそのように認定されると想定されます。

もっとも、名誉毀損に基づく損害賠償の実態のほとんどは慰謝料の請求です。慰謝料とは、精神的な苦痛という無形の損害を金額に換算して支払いを受け、損害を回復させることをいいます。ところが、今回「CMが陳腐だ」と言われたのは高須クリニックなのだとすれば、その主体は医療法人であり、法人には精神的な苦痛が観念できないので慰謝料は発生しないのではないかという疑問も生じます。

確かに、法人が精神的な苦痛を感じることは考えられないのですが、社会的な地位が低下すると売り上げの減少などの損害が生じるほか、低下した地位を回復させるためにさまざまなことをしなければならないなど無形の損害が発生すると考えられており、現在では法人にも無形の損害を認めるのが判例の趨勢となっています。

謝罪広告まで認められるのか

高須院長は損害賠償の他に、全国紙へ謝罪文を掲載するよう求めています。不法行為による損害賠償は、金銭の支払いが大原則ですが、これは法律上認められるのでしょうか。

この点、民法723条は「他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる」と定め、金銭による賠償という原則に対する例外を認めているのです。謝罪広告はこの例外の典型例です。

具体的に、どのような場合にどこまでの謝罪広告を命じるかについては、名誉毀損行為があった媒体が新聞なのか、雑誌なのか、テレビなのかといった違いや、名誉毀損による社会的地位の低下の程度などによって裁判所が判断することになります。

たとえば、「CMが虚偽だ」と言われた場合と「CMが陳腐だ」と言われた場合で比べると、前者の方が社会的地位の低下が大きいことが明らかで、後者のような場合にまで謝罪広告が認められる可能性は低いでしょう。

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