「地毛証明書」問題で暴かれたニッポンの本性 日独ハーフの筆者がこうも不気味に思うワケ

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ドイツには、さまざまなルーツの人が住んでいます。したがって、その髪の色も、赤毛、金髪、茶色、黒など色とりどり。見た目に関して「何が普通で何が変」という発想自体がありません。そもそも、人間の見た目にケチをつけ始めたら、80年以上前に12年間続いた「かの時代」に戻ってしまうという懸念がドイツ人にはつねにあります。

ですから当然、ピアスや化粧、ネイルなども全部自由なのですが、そもそもドイツではオシャレに力を入れている女性が日本よりも少ないため、バッチリ化粧やネイルをしている女学生を見掛けることはドイツではまれです。そういう意味ではピアスがいちばん浸透しているかもしれません。子どもの頃からピアスをしている人も多いのです。洋服に関しては、思春期の子がビリビリに破けたジーンズをファッショナブルに着こなしながら通学していたりしますが、もちろん先生は何も言いません。

頭髪という「個人的問題」を説明する必要はない

まあ、よその国はよその国です。外国のまねをすればよいという話でもないのかもしれません。ただ、外国とは比べずにこの問題を考えてみても、やはり地毛証明書は、百害あって一利なしだと言わざるをえません。

頭髪。それは極めて個人的なことです。頭髪がないことが病気の治療によるものなのか、それとも生まれつきの体質によるものなのか、または食生活の結果頭髪がないのかを、周囲に説明し理解してもらう必要はまったくありません。髪の色だって同じです。過去にパーマをかけすぎたせいで傷んで「茶髪」なのか、それとも今現在髪を染めているからなのか、はたまた先祖のルーツが外国にあることが原因なのか。あるいは、生粋の日本人でも、生まれながら茶色、という人は少なくありません。こうした極めて個人的なことを、周囲に説明して理解してもらう必要はまったくないのです。

それにしても、幼少期の写真とは、アルバムを広げながら「あの頃は楽しかったな」「こんなことがあったな」と懐かしみながら個人的に楽しむものだと筆者は思っておりました。それが「証拠」として使われることもあるとは……。考えれば考えるほど不気味なことなのであります。

サンドラ・ヘフェリン コラムニスト

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Sandra Haefelin

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴20年。 日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「ハーフといじめ問題」「バイリンガル教育について」など、多文化共生をテーマに執筆活動をしている。著書に『ハーフが美人なんて妄想ですから!!』(中公新書ラクレ)、『ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(ヒラマツオとの共著/メディアファクトリー)など著書多数。

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