イスラムとキリストの分断が深まる国の苦悩 インドネシアで起きた政争めぐる大混乱
とあるプロジェクトで共に仕事をした外国人女性と、お昼の休憩に東京・渋谷のラーメン店に入ったときのことである。
ハラールの店を探そうと思ったが…
「豚骨ラーメンください。ホルモン入りでオネガイシマス」
彼女の注文に思わず耳を疑った。なぜなら、彼女はイスラム教徒が国民の約9割を占めるインドネシア人だからだ。
インドネシア人ならば、イスラム教徒だろうとすっかり思い込んでいた私は、豚肉やアルコールは駄目かもしれない、なんならハラールの店を探したほうがよかろうか、などといろいろと気を使っていたのだが、彼女がランチにリクエストしたのは「ラーメン店」。そして、のれんをくぐったのは、日本人の若い女性だって尻込みするかもしれない、ホルモン入りのガッツリ系が有名な、男気あふれる気合の入った店舗だった。
実にうまそうに、ホルモンたっぷり、こってりと光る濃厚なスープをずずずっとすする彼女。「……ひょっとして、イスラム教徒ではないの?」。
すると、彼女はいたずらっぽく笑った。「私、キリスト教徒なのよ!」。
インドネシアは、世界第4位の総人口約2億5500万人のうち、約9割がイスラム教徒という、世界最大規模のムスリムを抱える国家である。これまで、インドネシアには取材や旅行で幾度となく足を運んだが、出会った現地の人のほとんどがイスラム教徒だったので、彼女のルーツににわかに興味が湧いた。聞くと、彼女は中国系で、祖父母の時代に中国から移住してきた3世代目なのだという。
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